事件現場清掃人は見た 親戚に見捨てられ首吊り自殺した「40代男性」の特別な事情

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5枚とも同じ言葉

 レポート用紙には、こんな言葉が書かれてあったという。

《働けないため生活が苦しい。親戚にお金を無心したら、冷たく断られた。そのせいで自殺するのだ。父に世話になったくせに。こんなにつらいのに……》

「レポート用紙は5枚ありました。1枚の用紙に書いた後、同じ言葉を別の用紙に何度も書き直しているのです。5枚とも同じ言葉が書かれていました」

 男性は、生活保護を受けることはできなかったのか。

「生活保護の制度があることすら知らなかったのではないでしょうか。人とのコミュニケーションがうまくできないため、自治体に助けを求めることもできなかったようです。親戚が生活保護をもらえるように男性に手続きをしてあげれば、自殺することはなかったのかもしれません」

 大家の話によると、その親戚は「私たちには関係ない」の一点張り。男性とは一切関わりを持ちたくないようだったという。

「親戚は大家さんとも話をしようともしなかったそうです。私としては、親戚から男性の遺品を放棄すると言われないかぎり、それを勝手に処分することができません。そのため遺品は1点ずつ写真を撮って、保管袋に入れて別の場所に移動する必要がありました。結局、特殊清掃の費用は全て大家さんの負担となりました」

 後日、親戚と大家は弁護士を介して連絡を取り、親戚が遺品を放棄することになったという。

「父親が亡くなって途方に暮れ、親戚からも無視されて死ぬしかなかった男性のことを思うと、やりきれない思いでいっぱいになりました。なんとも後味の悪い現場でした」

デイリー新潮取材班

2021年5月25日掲載

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