事件現場清掃人は見た 孤独死した男性の高級マンションで見つけた“札束”を見て考えた遺族の気持ち

国内 社会 2021年5月4日掲載

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 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を上梓した高江洲(たかえす)敦氏に、高級マンションで孤独死した70代男性のケースについて聞いた。

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 遺族が遺産相続を放棄するのは、たいてい亡くなった人に借金がある場合だという。今回ご紹介するのは、巨額の遺産を放棄した非常に稀な話である。高江洲氏が語る。

「現場は、都内の一等地に建つ3LDKの高級分譲マンションでした。70代の男性が孤独死しているのが発見され、マンションの管理組合から廊下に漂う腐臭をどうにかしてほしいという依頼でした。亡くなった男性には、別の場所で暮らす妻と2人の娘がいましたが、遺産相続を放棄したと聞かされました」

 高江洲氏は早速、現場に向かった。

100万円の札束が6束

「亡くなった男性は、土建会社の社長だったそうです。玄関には、立派な雉、居間には大鷲のはく製が置かれていました。3部屋のうち1部屋をもの置き場にしていましたが、そこにもはく製がありました。とにかく豪華な調度品が印象的でしたね」

 男性は、8畳の寝室で亡くなっていたという。

「死後1カ月経ってから発見されたそうですが、トイレか玄関へ向かおうとしたのでしょう。遺体の痕跡から、寝室から廊下へ出ようとしたものの、力尽きたようです」

 高江洲氏は、寝室を見て驚いた。

「キングサイズのダブルベッドの脇にサイドテーブルがあり、その上に100万円の札束が6束、無造作に置かれていたんです。ロレックスの時計や高級葉巻もありました」

 ウォーキングクローゼットの中も、オーダーメイドのスーツがずらりと並んでいた。

 さらに高江洲氏は、和室で仰天した。

「和室には、一枚板の高級テーブルがありました。その上に、硬貨が山のように積まれ、床にも散乱していました。どうやら男性は、買い物の際、紙幣だけを使っていたようです。お釣りとして受け取った硬貨は捨てるわけにもいかず、テーブルの上に置いたままになっていたのでしょう」

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