「紀州のドンファン」25歳の元妻、資金が尽き「パパ活」をしていた 家賃を踏み倒し“夜逃げ状態”に

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 年の差婚、多額の遺産、殺人。世間の耳目を集める題材揃いの「怪死ミステリー」は、いよいよ最終章を迎えそうである。和歌山県田辺市の資産家で、「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏(享年77)が急性覚醒剤中毒で急死してから、間もなく3年。やはり、和歌山県警が狙いを定めたのは、整形変身した「幼な妻」だった。

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 和歌山県警の捜査員10人ほどが上京し、須藤早貴容疑者の行動確認に入ったのは、4月20日以降のことだと見られる。

 事件発生当初から、55歳差をものともせずに結婚した須藤容疑者は犯人として目星をつけられていた。そもそも、AV出演歴もある元モデルの須藤容疑者が野崎氏と知り合ったのはモデル仲間からの紹介がきっかけ。野崎氏に気に入られ、月々100万円のお手当を条件に「パパ活」婚に踏み切ったのである。しかし、結婚生活はわずか4カ月足らずで幕を閉じることに。

 あらためて、捜査関係者がドン・ファン怪死の状況を振り返る。

「2018年の5月24日、野崎さんはいつものように未明に起床すると、経営する酒類販売会社で仕事をこなし、正午前後には自宅に戻りました。その時間になって、ようやく起き出してきた須藤容疑者と一緒に、家政婦さんの作ったしゃぶしゃぶの食事を摂った。その後、日課の昼寝をするために、2階の寝室に向かいました」

 夕方になると、須藤容疑者と一緒に寝室で相撲中継をテレビ観戦したという。

「相撲中継が終わった午後6時過ぎ、二人が1階のリビングへ降りると、家政婦さんが作り置いたうどんが用意されていました。夕食時、家政婦さんは夫婦水入らずとなるように気を利かせ、普段から外出するようにしていた。その時間帯を“ラブラブタイム”と呼び、当日も夕方4時から4時間ほどは不在だったのです」

 その間、自宅は夫婦二人きり。野崎氏は「食欲がない」とうどんには手をつけず、代わりにビール中瓶を半分ほど空け、寝室に引き上げた。一方、須藤容疑者は帰宅した家政婦とともにバラエティ番組を見てから夜10時過ぎ、寝室に行ったところで変わり果てた野崎氏の姿を発見したとされる。

「司法解剖の結果、野崎さんの身体に注射痕はなく、多量の覚醒剤を経口摂取したために死に至ったことがわかりました。さらに、経口摂取した時間帯として割り出されたのは、野崎さんと須藤容疑者が自宅で二人きりのラブラブタイムでした」

 和歌山県警は須藤容疑者所有の2台のスマホを押収し、「位置情報」の捜査を行った。GPS機能を解析すれば、測定誤差数メートルの範囲内でスマホの場所、さらには時間帯も絞り込める。その結果、野崎氏に一服盛れたのは、須藤容疑者以外にあり得ないことが判明したという。

 いわば、「消去法」での犯人洗い出しだった。

 同じく、和歌山県警が手掛けた1998年発生の「和歌山毒物カレー事件」でも犯人特定の決め手は消去法。住民らの証言に基づき、1分刻みでタイムテーブルを作成し、「林眞須美死刑囚以外に、カレー鍋にヒ素を混入する機会を持つ者はいない」との結論を導いたという。

韓国で整形

 一方、須藤容疑者は野崎氏と死別後、田辺市の自宅にはほとんど寄り付かなくなっていた。

 野崎氏の会社関係者によると、

「須藤容疑者は、すでに名前も旧姓に戻しました。最後に会ったのは市内の寺で執り行われた社長の三回忌法要です。弁護士事務所の男女スタッフ2人を伴って現れた。法要中、ずっとマスクを着けていたのですが、ふとした拍子で外したときに顔を見ると、須藤容疑者はまるで別人のようになっていました」

 目元がパッチリで、唇は「アヒル口」になっていたとか。

「以前、須藤容疑者から“このままでは日本で暮らしていけないから韓国で整形手術を受ける”と聞いていました。三回忌前に、それを実行したのかと。もし、須藤容疑者だと名乗らなければ、街中でばったり会ってもわからないくらい顔が変わっていた。それ以来、須藤容疑者はこちらには戻ってきていません。スマホの番号も変え、どこで何をしているのか、まったくわからないのです」

 事件当時、須藤容疑者は野崎氏と結婚生活を送る田辺市とは別に、東京・新宿区のマンションを借り、もう一つの生活の拠点にしていた。すでに、そのマンションを引き払い、次はさいたま市に移り住んだと見られている。

 捜査関係者が続ける。

「さいたま市のあとは、荒川沿いの足立区のマンションに転居しました。ところが、マンションの家賃を踏み倒し、“夜逃げ状態”で、そこも引っ越した。須藤容疑者は、18年7月末に野崎さんの酒類販売会社の社長に就き、報酬4千万円を得る手続きを取りました。しかも、野崎さんからのお手当も溜め込み、千万単位で持っていたはずなのに、カネ遣いが荒いためにすでにスッカラカン。目下、得意のパパ活で、品川駅近くのマンションに転がり込んでいます」

 なおかつ、忍び寄る捜査の手から逃れようと、今春をメドにドバイへの高跳びも画策していたという。

「野崎さんへの須藤容疑者の自己紹介は、“中国やドバイでモデルの仕事をしていた”というものでした。過去、ドバイ滞在をインスタにアップしたりしていたので、多少の土地勘があるのは間違いありません。万一、ドバイへの渡航を許せば、事件のお宮入りは確実。一部のメディアに須藤容疑者の”海外移住計画”をリークし、その阻止に動きつつ、逮捕を急いだのです」

 相続財産管理人が弾き出した野崎氏の遺産総額は13億2千万円。「田辺市へ全額寄付」と記された遺言状の真贋につき、田辺市と野崎氏のきょうだいらが係争中のため、未だ遺産相続は行われていない。仮に、田辺市への全額寄付が認められたとしても、須藤容疑者は「遺留分」として、その半分を手にすることができた。しかし、欲の皮が突っ張り過ぎたせいで、大金を得られたはずのパパ活は失敗に終わるのだろうか。

週刊新潮 2021年5月6・13日号掲載

ワイド特集「はるかなる黄金伝説」より

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