テームズ、スモークの加入は岡本との相乗効果を生むか【柴田勲のセブンアイズ】

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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京、大阪、兵庫、京都の4都府県に緊急事態宣言が発令された。対象地域内を本拠地とする巨人、ヤクルト、阪神、オリックスの4球団の主催試合は27日から5月11日まで無観客で行われるという。この間、延期となるケースもある。

 新型コロナは収束への気配を見せない。最近は飲みに出かけることがなくなったし、外出も仕事以外は公園への散歩くらいにしている。自分自身で身を守るしかない。

 さて、巨人は阪神、広島との6連戦を3勝3敗の成績だったが、25日の試合を落としたのは痛かった。8回、一気に6点差を追いついたものの最後は突き放された。

 ちょうど1週間前の18日・DeNA戦は2点差を守り切れずに引き分けた。今コラムで負けているのを追いついて引き分けに持ち込んだのと勝っているのに追いつかれたのでは違うと記した。負けに等しい。25日は追いついて勝ちに等しい引き分けに持ち込むはずが暗転した。こういう負けはショックだし、疲れも倍増する。

 でも阪神戦に2勝1敗と勝ち越したのは大きかった。ここで負け越していたら阪神を走らせるきっかけになったかもしれない。

 20日、3連戦の初戦は敗れたものの西勇輝から5回で4点を奪った。やはり低め低めへ丁寧に変化球を投げ込んできた。ヤクルトの小川泰弘もそうだが、セ・リーグには本格派よりも低めに変化球を集めるタイプが多い。やはり見きわめが大切だ。ボール球に手を出してはズルズルいってしまう。勇気を持って捨てる。そして視線を上げてベルトあたりの球に狙いを絞ることが大事だ。次回の対戦に期待したい。

 それにしても菅野智之が安定してきたと見ていたら、今度は戸郷翔征が出場選手登録を抹消され、今村信貴がいまひとつだ。

 その菅野にしてもまだ物足りない。何度も指摘しているけど変化球が多い。かわす投球で打たせて取る。省エネ投法か。でも菅野のだいご味は力と切れのある真っすぐだ。真っすぐが決まれば変化球も生きる。もっとシンプルに考えることも必要だ。

 さて27日からは引き分けを挟んで5連勝と好調のヤクルト戦(神宮)だ。2位に浮上してきた。巨人はこの日から待ちに待った新外国人選手が合流するという。ジャスティン・スモーク内野手(34)とエリック・テームズ外野手(34)だ。年明けの緊急事態宣言の影響で長い期間にわたり新規入国が認められなかった。来日後はファームで調整を続け昇格時期を模索していた。スモークはメジャー通算196発で一塁予定、テームズは同96発で外野予定だ。新外国人選手はふたを開けてみなければわからないことが多い。だが、この2人はファームで結果を出している(※)。どんな打線を組んでいくのか。原辰徳監督はいずれにせよ10試合くらい、いろいろ試すのではないか。長打力が本当にあるのか、率を残すタイプか、変化球への対応力、足はどうか、守備力などをチェックすると思う。まだ先は長い。

 ただ2人が同時に出場すると松原聖弥がスタメンから落ちる可能性が高くなる。梶谷隆幸と丸佳浩は外せない。1番・中堅として十分な働きをしている。丸が復帰しても原監督は中堅に据えた。守備力は高いし足もある。打撃の方も進歩している。

 原監督は悩むかもしれない。でも坂本勇人、丸、岡本和真にこの新外国人2人が絡んだ打線は大いに魅力がある。

 この2人が相応の活躍をすれば戦力層がグンと厚みを増す。ベンチには松原、中島宏之、亀井善行、吉川尚輝、若林晃弘らのメンバーが控える。主役と脇役がうまくかみ合って機能することが肝心だ。

 それに2人の新外国人選手が活躍すれば4番・岡本和にも相乗効果が生まれるかもしれない。21日の阪神戦で2発打った時は、こりゃいけると見たが、まだ迷いがある。甘い球を見逃す、ファウルにする。そうかと思えば厳しい球に手を出して凡打を重ねる。

 原監督が岡本和を4番から外すことはないと見る。不動だ。昨年、本塁打と打点の2冠を獲得して各球団の投手たちは研究し、マークが厳しくなっている。新外国人2人は岡本和の後ろを打つ5、6番が濃厚だという。打棒で貢献すれば岡本和には刺激になり、いい意味での影響を与えるだろう。ぜひ壁を乗り越えてほしい。

 巨人は本来の戦力が整った。阪神が首位を守っているが、巨人は投手陣、野手陣、どこを見ても劣っている点はない。焦らず、じっくりと戦えばいい。

 新外国人2人が合流した巨人、27日のヤクルト戦が新たなスタートになる。

※イースタン成績 テームズは9試合で打率.500、4本塁打、15打点 スモークは7試合で打率.333、0本塁打、5打点

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年4月27日掲載

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