朝日新聞の「少年法改正で再犯増」への疑問 少年犯罪被害者「現行法で更生はなされていない」

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 民法で18歳から成人となる以上、少年法の適用年齢もせめて18歳未満とすべきだろう。その点、今国会で審議中の少年法改正案は18、19歳を「特定少年」と位置づけ、成人に“準じた”扱いにするという踏み込みの甘い内容。18歳の犯罪でも逮捕時に実名報道はできず、検察の起訴後にようやく解禁となる。が、こんな“あと一歩”の法案にも、

〈「成人扱い」反対続々〉

 と、なお文句を付けたのは朝日新聞(4月7日付)だ。

 少年法改正に刑法学者や弁護士が記者会見で反対を訴えたという内容なのだが、看過できないのは記事末尾のコメント。声明の呼びかけ人の一人、一橋大学の葛野尋之教授が今後について「再犯増加を覚悟しないといけない。言い換えれば将来の被害者を増やすことになる」と指摘している。

 法改正で少年たちは更生の道が断たれ、再犯に導かれかねないというのである。

 多少説明の要があろう。

 反対派の論拠は二つ。まず、実名報道は将来の社会復帰の妨げとなるという昔ながらの主張。そして二つ目。こちらはやや複雑だ。

 改正案では18、19歳について家庭裁判所から検察に原則逆送となる事件の対象を拡大。従来は殺人と傷害致死だけだったが、強盗、強制性交なども対象に加え、被疑者を裁判にかけるかどうかを検察で判断する。

 起訴されて実刑となれば、刑務所送りになりかねない。執行猶予がついたりすれば、それはそれで彼らはシャバに放り出される。いずれにせよこれまでの少年法で担保されていた、少年院送致や保護観察など更生機能への道筋が奪われ、「再犯増につながる」というわけだ。

 これらの見解に「少年犯罪被害当事者の会」代表の武るり子さんは反論する。

「実名報道とは相応の犯罪を行った者に対してなされることで、普通の人より社会復帰に努力が必要だと、むしろ本人に教えるべきなんです。逆送の対象が広がったのもいいことで、強盗、放火、強制性交などでも大人と同様に刑事処分を科される可能性があると知らしめるべき。執行猶予がつくと社会に戻ってしまう点は法改正の穴で、たしかに問題です。しかし、法制審議会でも対処法は検討されており、穴は塞がれると思います」

 反対派は現行少年法をしきりに擁護するのだが、

「私たちの会には35の家族がいて、約150人の加害少年の半数は少年院に、半数は少年刑務所にいましたが、自らの意思で謝罪してきた者はいません。民事訴訟による損害賠償の支払い命令も、履行されることはごく稀です。これで更生したと言えるのでしょうか」

 朝日に質すと、法改正に関しては賛否のほか被害者の声も含めて幅広く伝えている旨回答があり、一橋大の葛野教授は新学期準備で時間がない、とのこと。

 被害者の心を踏みにじるのは加害少年だけだろうか。

週刊新潮 2021年4月22日号掲載

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