“犯人はアイツだ” ネット上で誹謗中傷が飛び交う三鷹「地域猫虐待死事件」の真相

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警察官と対立を深めるT会

 確かにT会のツイッターを確認すると、現在も交番の警官を敵視する内容が羅列されている。

〈○○(註:原文は実名)駐在所に住んでおられる警察官、早く貴方が多数撮影した、タヌちゃん虐殺体写真を公開しなさい。貴方が隠していたせいで、私どもは要らぬ名誉毀損行為を受けた。貴方の責任である。虐殺事件であることを明白に証明する写真の撮影者である事を隠し、陰では私どもを嘘つき呼ばわり〉

〈自然死などあり得ません。惨殺体を見、写真にまで写した○○(註:同)駐在所の警官は、今まで二転三転しているが、何を今頃になって「自然死では?」などと言うのか。ならば、撮影したタヌちゃんの遺体写真を見せてみろと言いたい。彼は不審でしかない〉

 T会ばかりでなく、ネット上でつながったと思われる複数の人物までもが、警官への個人攻撃に加勢しているのである。

 記者は交番を訪ね、警官に犯人視されていることについてどう思うかと問うた。警官は自身や家族に疑惑の目を向けていることは認めつつも、

「取材にはお答えできません。事件の詳細については、三鷹警察署のほうに行って聞いてください」

 と答えるのみだった(その後、警視庁本部を通して三鷹署に取材を申し込んだが、「個別の事案については回答を差し控えさせて頂きます」と回答)。

突然、犯人視された「花屋」の女性

 疑われたのは警官だけではない。京王・井の頭線沿線で花屋を営む女性もTwitterに犯人であるかのような書き込みをされていた。本人が語る。

「私は三鷹市民ですが、事件現場近くに住んでいるわけでもなく、まったく無関係の人間です。けど、事件がネットやSNS上で、あまりに大げさに騒がれすぎているのが気になって、つい彼らに絡んでしまったのです。それが思わぬことになってしまい……」

 店主によると、事件後しばらくすると、地元住民ではない社会活動家のXという人物が事件に関心を持ち、T会と連絡を取り始め、夜中に事件現場近辺のパトロールを始めたという。

「地元の人間からしたら、警察でもない関係のない人が、そんなことをしたら気持ちが悪いじゃないですか。だからXさんに、Facebookを通して『そういうことはやめてください』と連絡したんです。そしたら……」(同・店主)

 いつの間にか、見知らぬTwitterのアカウントに自分の店の写真が載っていたというのだ。T会やX氏とTwitter上でつながっていると思われるYという人物のTwitterのアカウントであった。確かにそこには、店の写真が掲載され、このような文章が載っている。

〈この花屋さんは、○○○(註:三鷹市内の住所)という事で、タヌキちゃんの事、知っているかもしれません。三鷹警察署に、この画像も、持って行ってください〉

 Y氏の投稿はその後、エスカレート。店主の名前、店名までをも挙げ始め、〈警察が泳がせている〉と、あたかも犯人視するような書き込みまで加えた。

「このYという人物は、どうやら九州の在住の人物で、駐在の警官に対しても嫌がらせのような投稿を繰り返しています。警察にも相談に行きましたが、この程度だと事件化するのは難しいと言われてしまい、泣き寝入りしています」(同・店主)

 三鷹市と連携し、犬・猫の保護活動を10年間継続してきたという動物愛護団体Mの代表を務める女性も、T会の動きについて不信感を募らせる。

「事件後、彼らの方から私に接触してきました。最初は私も彼らの話を信じていたんです。けれど、言っていることがあまりに過激すぎる。おかしいなと思って三鷹署の関係者に確認してみた。すると関係者は、『ちゃんと捜査をしている』と言うし、実際は、ブログに書かれていた遺体の状況とはだいぶ隔たりがあるとも言う。だから私は、T会の代表らに写真を送ってもらうよう求めたのです。けれど、はぐらかされ、連絡が取れなくなった。そのうち彼らは、私を敵視するようなことを周囲に言い始めたのです」

T会の主張

 これらの批判の声に対し、T会は何と答えるか。代表の女性は、1時間にわたって取材に答えた。代表はタヌキちゃんと会との関わりについてこう説明した。

「うちの会の副代表を務める男性は以前、あの近辺に居住していました。彼は18年前から、野川沿いに住み着いている猫たちに不妊去勢手術するなどのボランティア活動をやっていたのです。タヌキちゃんは16年くらい前から、副代表が面倒を見ていた生き残りの猫。現在、副代表は引っ越して別の地域に住んでいますが、ずっと三鷹に通って面倒を見続けてきました。タヌキちゃんが死ぬ2日前にも会いに行っています。その時は元気な姿でした」

 そのように大事に見守ってきた猫が亡くなったことで、副代表がショック状態に陥ったことは想像に難くない。とはいえ、ブログの内容は大げさだったのではないかと問うと、こう反論した。

「批判したい人たちは“血の量”を問題視しますが、それは本質からずれています。明らかに交通事故では説明がつかない、人にやられたという状態を示す証拠写真が、ちゃんとあるのです。自然死などとんでもない。腕にいっぱい血がついている。歯が壊れちゃっているし、内臓が飛び出ているようにも見えます」(同・代表)

 だが、写真は見せられないという。

「写真は不鮮明ですし、それを公開するとことで『そこまでぐちゃぐちゃじゃない』などと攻撃を受けるのが嫌なんです。いまネット上で私たちは、会ったこともないような人たちから個人攻撃されています。過去に私が公金を横領しただの、ウイルスを持っている猫をずさんに管理しているとか、デタラメを流されている」(同・代表)

 一方で、警官への疑念については自信を持ってこう主張した。

「タヌキちゃん事件を誰かが闇に葬りたがっている。駐在の警官は、当初、副代表や地域の人たちに対し、『あれは虐殺遺体だ。自分は交通事故の遺体を見ているからわかる。こんな風に犯人にやられたんだ』と予想まで語っていた。そうした証言をもとに、私たちは当初、あのブログに書いたのです。けれど、言動がどんどん変わっていき、しまいには『自然死だった』みたいなことまで言い出した。明らかにおかしい。三鷹署も自分たちの失態が明らかになるのを恐れ、隠蔽しようとしているとしか思えない」(同・代表)

 X氏も取材に応じ、このように述べた。

「私がよそ者であることは事実ですが、動物愛護団体を主宰する者として、タヌキちゃん事件の真相を知りたい一心で活動を続けています。私もT会と同様、警官の言動の変遷には非常に疑いを持って見ていますが、警官や花屋の店主に対するSNS上での誹謗中傷には関与していません。動物を守ろうと活動している方々がいがみ合ったり、それにネット上で無関係の人たちまで加わっている現状には、問題があると考えています」

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