モード・アルシャンボーが日本で見つけた飲食店 美味しいNIPPON

ライフ 食・暮らし 週刊新潮 2021年4月1日号掲載

  • ブックマーク

 好きな飲食店や好物の話を聞けば、その人の人となりが解るというもの。ゆえに「名は体を表す」ならぬ、「食は体を表す」なのである 。この企画では、外国籍の著名人の方々にご登場頂き、行きつけのお店をご紹介してもらいます! 意外なお店のチョイスに驚くこと必至! 彼らの食に対する感性と経験が垣間見えちゃうんです。第83回は、モード・アルシャンボーさん。今回は「河辰(かわたつ)」に伺いました!!

 歌は世につれ世は歌につれというけれど、もはや今日の日本人にとって、民謡はかなりとっつきにくいイメージがあるのではなかろうか。カナダはケベック州出身のモード・アルシャンボーさんが、そんな伝統芸能の世界に飛び込んだのはおよそ20年前のこと。日本文化に興味を持って来日し、何か一芸を身につけようと、まず“やりたいことリスト”を作った。

「生け花、お茶、三味線……と考えていたんですけど、民謡の存在は知りませんでした。でも、当時、蕨で英会話学校の講師をしていたら生徒が近所の民謡教室を教えてくれて」

 民謡歌手の村松喜久則氏に師事し、唄はもとより三味線、鳴り物、さらに民舞を研鑽。全国で舞台を踏み、ついに2014年、晴れてプロの証である日本民謡プロ協会への入会を認められた。もちろん、外国人初。ズバリ、民謡の魅力とはなんでしょう?

「唄、三味線、鳴り物、みんなが集まってひとつの作品を作り上げるのがたのしいし、歌詞を味わうのもたのしい。歌詞に出てくる地名を知ることで旅をしているような気分になれるんですよ」

 そんなモードさんが師匠とともによく訪れるのが、教室の近くにある「河辰」。まぐろ料理が堪能できる地元の名店である。

 本まぐろやインドまぐろが惜しげもなくお皿を覆いつくす「刺盛」には、中トロや大トロもてんこもり。一切れ一切れ気前がいい厚みだから、大満足できること請け合いである。

「カマ塩焼き」もダイナミック。逸品にすっかりゴキゲンの師匠が、

「まぐろのカマは大きいね。ブリのカマはもっと“小ブリ”だよね」

 とカマせば、モードさんは、

「絶好調ね」

 そう合いの手を入れる。入門当時の話になり、

「靴下に穴があいていてね。大変なんだろうなァと思いましたよ」(師匠)

「昨日もあいてましたよ!」(モードさん)

 ビールと焼酎のせいか、民謡の師弟というよりは漫才コンビのような掛け合いに。こういう関係にこそ、伝統芸能の真髄が……なんてのは大袈裟か。