韓国で不動産不正疑惑、政権に大打撃 文大統領一家も関与か

国際 韓国・北朝鮮

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 来る4月7日、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領(68)が剣が峰を迎える。来年の大統領選の行方を占う、ソウルと釜山の二大都市市長選が行われるのだ。そんな大事な首都決戦直前に一大スキャンダルが文政権を襲い、大騒ぎに。その「お隣さん」の様子を覗いてみると……。

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週刊新潮」(3月25日号)では、韓国の検事総長が文大統領に反旗を翻し辞任、次期大統領候補の筆頭に躍り出た話をお伝えしたが、今、文氏にさらなる不幸が襲い掛かっている。龍谷大学教授の李相哲氏が、

「これまでにも文政権にはさまざまなスキャンダルが持ち上がりましたが、今回の疑惑が政権にとって最大の打撃になると思います」

 と評する一大疑獄に、文政権は直面しているのだ。実際、3月22日に発表された世論調査では、文氏の支持率は34・1%と政権発足以来最低を記録し、

「文大統領の残り任期1年は、求心力を失い、側近から離反者が出て内部告発が行われるなど、ボロボロになっていくでしょう」(同)

 という具合に、文政権は断末魔を迎えつつあるのだ。

「2017年に文氏が大統領に就任して以降、ソウル市内のマンション価格は58%も上がったという調査報告があります」

 と、ある韓国ウォッチャーが、文氏を危機に陥れている今回の「不動産不正投機疑惑」について説明する。

「もともと、人口約5200万人のうち、ソウルを中心とする首都圏にその半数が住んでいるという『ソウル密集』問題があり、首都の不動産価格が上昇する土壌がありました。そこに、左派の文政権が行った『社会民主主義的政策』が追い打ちをかけることになり、ソウル周辺で土地バブルが起こってしまったんです」

 その政策はというと、

「最低賃金引き上げを象徴とする弱者救済政策です。これ自体、悪いことではない。しかし、文政権下で最低賃金が30%以上引き上げられたことにより、逆に零細企業は雇用を維持できなくなり、新たな失業者を生んで貧富の差が拡大した。結果、富裕層たちの間で不動産投機ブームが起き、不動産価格高騰に拍車が掛かってしまった格好です」(同)

 韓国出身の評論家で拓殖大学教授の呉善花氏が嘆く。

「最低賃金の引き上げもそうですが、文大統領は中国型の社会主義的な『国家資本主義』を目指し、そちらに舵を切ってきた。中国のようなやり方に未来があると信じ込んでいるのでしょう。文政権の方針は『離米反日』で、内心では中国、そして北朝鮮と手を結びたいと考えているんです」

 事実、3月17日に行われた米韓の「2プラス2」において、目下、国際情勢で最大の脅威となっている中国に関して直接言及されることはなかった。前日の日米の2プラス2で、両国が連携し、中国を名指しで批判したのとは大違いである。韓国が「中国チーム」の一員たらんとしている姿が改めて明確となったのだ。

 元朝日新聞ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏が一刀両断する。

「文政権は『中国にやられる』という恐怖心を持っているため、中国ベッタリの姿勢を決して崩すことはないでしょう」

農業実績は家庭菜園!?

 そんな「赤い政権」が、弱者救済政策によって新たな貧困層を生むという皮肉な現象をもたらしたわけだが、無論、文氏もただ傍観していたわけではない。

「ソウル周辺に新都市を建設することで、不動産価格の高騰に歯止めを掛ける政策を行ったのですが……」

 と、先の李氏が続ける。

「具体的には18年9月に『第3期新都市計画』を打ち出して、その3カ月後に四つの新都市地域を発表し、翌年の5月にさらに二つの地域を追加します。この新都市計画におけるマンション建設のための土地収用等は、政府系組織である韓国土地住宅公社(LH)が担っていました。ところがこの計画が発表される前に、LHの職員13人が第3期新都市計画の該当区の土地を購入していたことが、弁護士団体の調査によって3月2日に発覚したのです」

 同都市計画の該当区の土地は好条件で買い取ってもらえることになる。要は、LHの職員はインサイダー情報に基づき、濡れ手で粟が必定の土地を購入していたのだ。

「慌てた文政権は、この不動産不正投機疑惑を調べるため、770人体制の合同調査団を立ち上げましたが、そこから検察は外されました。韓国国民は、誰もまともな調査が行われるとは信じておらず、実際、1回目の調査結果発表で新たに不正に関与していたことが判明したLHの職員はわずか7人。そんなに少ないはずはないと疑われ、世論はますます沸騰しています」(同)

 挙句、大批判の嵐に晒されたLHの幹部職員2人が自殺する事態にまで発展し、その結果、「支持率最低」に至ったのだ。

 さらに、この状況に火に油を注いでいるのが、他ならぬ文大統領自身なのだから困ったものというか、呆れる以外にないのである。

 まず文大統領は、

「就任以来、『不動産投機によってこれ以上、金儲けをできないようにする』と、何度も繰り返しアピールしてきました」(前出ウォッチャー)

 にも拘(かかわ)らず、足元の政府系公社の職員たちが「投機」に勤(いそ)しんでいたのだ。ブラックジョークと言う他あるまい。

 加えて、「文一家」にも不動産不正の疑惑が持ち上がっており、もはや笑うに笑えないカオス状態と化しているのである。

 昨年4月、文大統領夫妻は新しい私邸を建てるため、14億7千万ウォン(約1億4700万円)で3860平方メートルの土地を購入している。その土地には農地が含まれており、購入者には「農業実績」が必要だった。そのため、文夫妻は土地購入に際して「営農経歴11年」と申告していたのだが、その営農経歴とは実のところ「家庭菜園」に過ぎなかったのではないかと指摘されているのだ。つまり、虚偽申告に基づいた不正土地購入疑惑である。

 文一家に向けられた韓国国民の不信はこれに留まらない。

 文大統領の義理の弟が、開発制限区域の土地を購入し、LHから47億ウォンもの土地補償差額を得ていたことも発覚している。

 その上、文大統領の娘が一昨年5月に買った不動産をわずか1年9カ月後に売却し、1億4千万ウォンの売却益を手にしていたことまで判明。しかも、文氏の娘が不動産を売ったのは、文政権によって新たな不動産価格高騰防止対策が発表された今年2月4日の翌日だった。この間の悪さが、韓国国民の怒りを爆発させたのだった。

 産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏は、文一家の疑惑についてこう解説する。

「法律に違反しているわけではありませんが、文大統領は国民に対して不動産投機を慎(つつし)むべきだと言ってきた手前、非常にイメージが悪い」

 当の文氏は、自身の不正購入疑惑を追及する野党を、

「みみっちくて、恥ずかしい」

 などと断じ、反論するも、この開き直りがまた裏目に出る。韓国メディアに、

〈(大統領就任以来)4年間、「不動産投機との戦争」を繰り広げてきたのは「ショー」だったのか〉

〈文大統領一家の不動産問題、みみっちくない重大問題だ〉

 と混ぜっ返され、さらなる大批判を誘発する結果となったのである。

入試、兵役、そして…

 こうした文政権の惨状を、

「文大統領の就任時のスローガンは『公正』『平等』『正義』の三つでした」

 として、先の黒田氏はこう分析する。

「まず平等ですが、弱者保護のための最低賃金引き上げにより新たな失業者を生む矛盾が起きたことで実現できていない。次に公正についても、『たまねぎ男』ことチョ・グク元法相の娘の大学不正入学疑惑に象徴されるように、『身内』に甘いことが露呈した。最後に正義は、なかなか誤りを認めようとせず、『俺たちを批判する奴は非正義』という姿勢が見え、これも問題がある。つまり就任当初に掲げた三つのスローガンが、全て壊れてしまったと言えます」

 また前出の李氏は、文政権の「スキャンダル史」についてこう解説する。

「韓国国民が最も怒りを露わにする不正には三つのタイプがあります。ひとつは、入試に関わる不正です。超学歴社会の韓国では、出世するためには良い大学に入らなければなりません。入試だけは公平であるべきで、権力やお金を使って不正入学が行われることを国民は決して許さない。しかし、チョ・グク元法相の娘に不正入学疑惑が持ち上がりました」

 ふたつ目は兵役に関わる問題で、

「軍隊に2年間行くと人生に空白期間が生じるため、ここにも韓国国民は公平さを求めます。しかし、チョ・グク氏の後任の秋美愛(チュミエ)法相に、彼女の息子が兵役中に休暇延長の『優遇措置』を受けていたとのスキャンダルが浮上しました」(同)

 そして最後が、

「不動産に関わる問題です。不動産は財テクの手段であると同時に、韓国には日本以上とも言える強いマイホーム願望がある。今回、国民の関心が高いこの不動産問題で不正が起きたために、韓国国民の怒りは頂点に達しているのです」(同)

 要は文政権は、黒田氏が指摘した通り「三つのスローガン」が破綻してしまった上に、李氏曰く、韓国国民が激怒する「三つのスキャンダル」を全部“実行”してしまったのだ。

週刊新潮 2021年4月1日号掲載

特集「首都決戦直前に一大スキャンダル 『不動産不正疑惑』で韓国『文在寅大統領』の断末魔」より

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