50億円騙し取られた「HIS」会長兼社長、裁判を起こされる立場に 横領で得られた金を受け取り

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香港での金(きん)取引

 コロナ禍の影響をモロに受けた旅行業界。大手「エイチ・アイ・エス」でも、売り上げは激減し、今年1月までの3カ月間の決算で79億円の最終赤字に陥った。そんな中、カリスマ経営者として知られる澤田秀雄会長兼社長は、過去に引っ掛かった詐欺事件を巡り、裁判を起こされそうなのだという。

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 澤田氏は、3年前に「リクルート株詐欺」という架空の株取引に引っ掛かり、50億円もの大金を騙し取られた。結果として、澤田氏は自らが保有するHIS株を売却し、損失の穴埋めを図った。このとき、架空のリクルート株取引を持ちかけられたのは澤田氏の金庫番で、「アジアコインオークション」なる会社の経営者、石川雄太氏だった。

 澤田氏が現在訴訟を起こされそうになっている端緒は、詐欺事件よりも前に彼が関わっていた石川氏の香港でのビジネスにあるという。

「石川さんは金の取引をする“エボネックス”という現地法人を設立。その会社で、日本なら三菱マテリアルのような金を保有する“セラー”から金を買い入れ、精錬所に売却するというビジネスを行っていた。エボネックスの利益は、買い値と売り値との差額分です」(石川氏の元ビジネスパートナー)

 この人物は、計8億5500万円をこのビジネスに出資。一方で、澤田氏も同時期にエボネックスを頻繁に訪問し、50億円で金1トンを購入したという。

「最大の責任は澤田氏にある」

「詐欺に引っ掛かったことを境に、エボネックスの金の取引は目に見えて減少していきました。それまでに計1億円の配当を受け取っていましたが、19年になると完全にストップ。石川さんを問い詰めると、“澤田さんも承知のうえで、金の取引に充てるはずの出資金を澤田さんへの弁済に回した”と明かしたのです」(同)

 石川氏曰く、「詐欺グループから10億円は回収できたものの、澤田さんの取り立てが厳しく、17億円は出資金から都合をつけた」とのことだった。

「つまり、澤田さんはエボネックスから横領した資金で、詐欺被害の穴埋めをさせたわけです。私は石川さんに対し、受け取っていた1億円の配当を差し引き、出資金7億5500万円の返済を求めました。ところが、19年5月に“債務確認書”を交わして以降、音信不通になってしまった。一方で、元はといえば、私が出資金を失った最大の責任は石川さんではなく、澤田さんにあるはずです。そのため、矛先を澤田さんに向け、横領による不当利得として受け取った出資金を戻してもらおうと、裁判を起こすことにしたのです」(同)

 詐欺被害者から一転、訴えられる側になりそうな澤田氏に話を訊こうとすると、

「個別の取引に関する回答は差し控えさせていただいております」(広報室)

 有料版では、澤田氏が50億円詐欺に引っ掛かってから、逆に訴訟を起こされるに至った背景について詳報する。

週刊新潮 2021年4月1日号掲載

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