「辛ラーメン」開発者死去 あんなに辛いラーメンが売れ続ける韓国の特殊事情とは

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「辛ラーメン」の開発者として知られる、韓国食品大手「農心」創業者の辛春浩氏が、3月27日に死去した(享年90歳)。訃報は日本でもニュースになったが、「“辛”って創業者の苗字でもあったんだ」と驚いた人も多いはず。あの激辛ラーメンはどのようにして、韓国のソウルフードとなったのか。韓国人ジャーナリストに話を聞いた。

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“男を泣かせる辛いラーメン”

「誤解している人が多いかもしれませんが、韓国人は生まれながらにして辛い食べ物が好きなわけではありません。当然、子供は『辛ラーメン』に口すらつけられない。成長するに連れて、徐々に辛さに慣れていくんです。辛いものが食べられるようになったら、大人になったね、みたいに言われます」

 こう語るのは、日本文化に詳しい韓国人ジャーナリストのピョ・シュシク氏だ。韓国では500種類ほどの即席麺が売られているが、すべてが「辛ラーメン」のような唐辛子系のものではないという。むしろ、日本でも売られているような味噌味や塩味のほうが多く、赤くて辛いラーメンは2割ほど。中でも、「辛ラーメン」は激辛部類に入るといい、

「CMのキャッチコピーは『男を泣かせる辛いラーメン』。男らしさを体現したようなスポーツマンや俳優が、汗を流し、ふーふー言いながら食べるんです。当然、韓国人もみんな辛いと思いながら食べていますよ」

最初に食べられていたのは「チキンラーメン」だった

 即席麺消費量世界1位と言われる韓国。だが、そもそも即席麺の発祥は日本だ。NHKの連続テレビ小説のモデルにもなった、日清食品の創業者・安藤百福氏が1958年に開発した「チキンラーメン」が元祖と言われる。韓国でも、最初に食べられていた即席麺はチキンラーメンだった。

「当時、朝鮮戦争が終わったばかりの韓国は食糧難の時代で、コメより小麦粉を主食にする政策が取られていました。そんな中、『三養食品』が1963年に国産初の即席麺『三養ラーメン』を開発したのがきっかけで、即席麺は普及していきます。このラーメンも『チャルメラ』で知られる日本の食品メーカー『明星食品』から技術提供を受けて作られた商品で、最初は日本人好みの味でした」

 三養食品に遅れること2年。1965年に、菓子メーカー「ロッテ」の創業者一族だった辛春浩氏が設立した会社が、「農心」の前身となる「ロッテ工業株式会社」だった。同社が製造していた即席麺も、当初は日本の商品を模したもので、

「徐々に韓国人好みに合わせてアレンジが加えられていった感じですね。農心が82年に出した、もちっとしたうどんのような食べ応えの『ノグリ』は中辛、83年に出した牛骨スープ味の『安城湯麺(アンソンタンミョン)』もちょい辛でした」

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