スパイに不正行為、サイン盗み疑惑…センバツ三大騒動はこうして起こった!

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控室に乗り込んで抗議

 試合中に監督が相手チームのサイン盗み疑惑をアピールする事件が起きたのが、19年の2回戦、星稜vs習志野だ。1点を追う習志野が4回1死二塁とした直後、星稜の捕手・山瀬慎之介(現巨人)が球審に「(二塁走者が)サインを盗んでいるようですけど」と訴えた。さらに習志野が同点に追いつき、2死満塁となったところで、今度は林和成監督が同様の抗議を行ったため、試合を一時中断し、4人の審判が協議したが、事実を確認できなかった。

 しかし、「私は習志野の1回戦、日章学園戦でサイン盗みに気づきました。ビデオを分析したところ、二塁ランナーのジェスチャーで球種を伝えていたことが分かりました。習志野戦の前に石川県の高野連に所属する審判にもそのことを伝えています」(週刊新潮2019年4月11日号)という林監督は納得できず、1対3で敗れた試合後も、2度にわたって習志野の控室に乗り込み、抗議した。

 これに対し、習志野・小林徹監督は「そういう事実はない」と完全否定。その後、高野連は「試合中に『サイン盗みの確証はない』と判定した審判団に承服しない態度で、フェアプレーの精神を侵した」ことなどを理由に、林監督に6月上旬まで部活動の指導を禁止する処分を科した。

“超えてはいけない一線”の真相究明は状況的に難しく、その種の行為がなかった場合でも、「サインを盗まれているのでは?」と意識して自滅することもある。野球の怖さであり、甲子園が魔物たる所以かもしれない。

※肩書きは当時

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年3月29日掲載

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