エリック・シュバリエが日本で見つけた飲食店 美味しいNIPPON

ライフ 食・暮らし 週刊新潮 2021年3月25日号掲載

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 好きな飲食店や好物の話を聞けば、その人の人となりが解るというもの。ゆえに「名は体を表す」ならぬ、「食は体を表す」なのである 。この企画では、外国籍の著名人の方々にご登場頂き、行きつけのお店をご紹介してもらいます! 意外なお店のチョイスに驚くこと必至! 彼らの食に対する感性と経験が垣間見えちゃうんです。第82回は、エリック・シュバリエさん。今回は「多聞」に伺いました!!

 大阪の商業都市・堺は、包丁や鋏の名産地としても知られる。市の中心地にある堺伝統産業館の2階には、それをアピールする堺刃物ミュージアムがあるが、そこへ行くと、堺の刃物の素晴らしさを熱く説く青い目の若者の姿を見かけるという。

 その人の名はエリック・シュバリエさん。フランス・パリ近郊の出身で、友人が聴いていた日本の曲の独特な響きに魅せられて、パリ大学の日本語学部に学び、20歳でワーキングホリデー制度を利用して日本にやってきた。

 その後、堺の鋏鍛冶「佐助」がフランスで弟子を募集するための翻訳の手伝いをしたことが縁で、「佐助」の工房に弟子入りして4年半ほど修業、今は趣味で刃物を鍛える一方、堺市をアピールする「海外需要開拓(インバウンド)コーディネーター」も務めているのだ。

「私の先祖は15世紀頃から鍛冶屋を家業としていました。だから、炉で火がおこされて、鉄の塊が叩かれ延ばされる様子をみて、私に流れる血が騒いだのでしょう」

 グルメの国として名高いフランスからやってきたエリックさんだが、その彼が自らの住む街でお薦めは、フレンチのレストランやビストロではなくて、意外にも日本人の国民食ともいえるラーメンの店だった。

「日本の料理は出汁の文化ですね。フレンチにもブイヨンがありますが、日本のほうが奥深いです」

 エリックさんに紹介してもらったのは、室町時代に、堺を守るために掘られた堀にかかる橋の袂にある「多聞」。ポタージュのようなスープとモチモチの麺が評判の店だ。宮田宏之店長によると、

「スープは鶏をベースに、鯖節、鰹節、鰯節も使って味を濃縮しています。こってりした汁に仕上げてあるのですが、味付けは見た目ほどはしょっぱくありません」

 さらに、北海道産の小麦粉を使っているので、麺にコシがありながら、つるんと飲み込める仕上がり。ズルズルと啜る音をたてず、パスタのように喉越し滑らかに食べられるところが、ヨーロッパ出身で猫舌のエリックさん好み?