三浦大輔は一度も勝てず…プロ野球「開幕投手」選ばれし12人の“大記録”“珍記録”

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「格というものがあるだろう」

 96年のロッテは、伊良部秀輝、小宮山悟、エリック・ヒルマンと開幕投手の候補者が3人いたが、開幕直前に伊良部が故障、2戦目の小宮山、3戦目のヒルマンを動かせないチーム事情から、江尻亮監督は苦肉の策で4番手の園川一美を開幕投手に指名した。

 対戦相手のダイエー・王貞治監督は「開幕投手には格というものがあるだろう」と批判したが、園川は5回2死まで2失点に抑え、勝利投手にはなれなかったものの、チームの勝利に貢献。見事王監督の鼻を明かした。

 その王監督も、01年のオリックス戦では、「開幕は特別なものだから、平常心では戦えないし、経験を考えた」という理由から、前年わずか1試合の登板で0勝の西村龍次を抜擢。過去4度開幕投手を務めて、いずれもチームは優勝というV確率100パーセントのご利益にあずかろうとしたが、結果は黒星スタートでV逸と裏目に出た。

 これに対し、98年の横浜は、三浦大輔、川村丈夫、野村弘樹の候補者3人の中から、権藤博監督が「高校は進学校、大学も一般入試で現役合格し、自分の力で掴み取っている、あいつのインテリジェンスに賭けた」という理由で、最終的に川村を選んだ。川村は開幕戦史上3人目の1安打完封勝利を挙げ、38年ぶりの日本一にも貢献。同じゲン担ぎでも、現時点での実力が反映された分、ご利益があったと言えそうだ。

 04年、就任1年目の中日・落合博満監督も、故障で過去3年間1軍登板のない川崎憲次郎を「チームを生まれ変わらせるために、3年間最も苦しんだ男の背中を見せなければならないんだ」と考え、あえて開幕投手に指名した。

 川崎は2回途中でKOされたが、結果的に「このままでは終われない」とナインを一致団結させるカンフル剤となり、中日は5点差を逆転して鮮やかな開幕白星スタート。5年ぶりのリーグ優勝へと邁進した。

 開幕戦はあくまで143分の1試合に過ぎないにもかかわらず、開幕投手とその年のチームの成績が関連づけて語られることが多いのは、やはり「何事も最初が肝心」という考えが根強いからだろう。今年も“選ばれし12人の男たち”のシーズン最初の闘いから目が離せない。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年3月25日掲載

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