マラソンで好記録の選手が五輪に出られない理由 瀬古リーダーが情に流され

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 名古屋ウィメンズマラソンが3月14日に行われ、松田瑞生(25)が2時間21分51秒で優勝した。

 フルマラソンは5度目ながら、優勝は早くも3回目。勝負強さを見せつけた松田に瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーも、

「安定性で言えば女子の中で一番」

 と太鼓判を押す。ところが、来る東京五輪は補欠に甘んじているという。

 そういえば、2月28日に行われたびわ湖毎日マラソンを2時間4分56秒の日本新記録で制した鈴木健吾(25)も五輪には出ない。

 活きのいい彼らがなぜ五輪に出ないのか? それは男女各3名の内定枠が既に決定済みだからに他ならない。だが、旬の選手が代表になれないことに不条理さを感じる人は少なくない。

「マラソンの代表選びがモヤモヤした結果になるのは今に始まったことではありませんが……」

 とは大手紙陸上担当記者。

「今回新たに作られた選考方法はうまくできていました。各地で行われるレースいわば予選で好走した選手に、本選であるMGCの出場資格を与え、そこで2位以内の選手が即内定。残る男女各1枠は、MGC3位と、後のレースで好走した選手の中から選ぶ。公平かつ旬の選手を逃さない方法で、昨年3月8日の内定発表時には異論は聞かれませんでした」

 だがその16日後、コロナ感染拡大のため東京五輪の延期が正式決定。しかしその翌日、瀬古リーダーは高らかにこう宣言した。

「内定者6人の権利を守りたい」

 この発言が再選考をどうするかという議論を封じた。

「いま思えば拙速な判断だった、と言わざるを得ませんね」

 と先の記者が苦笑する。

 内定者たちを見渡せば、中村匠吾(28)と服部勇馬(27)は故障で今冬は全く走れず。名古屋にエントリーしていた鈴木亜由子(29)も故障でドタキャン、と惨憺たるありさまである。

「政治的ボイコットのせいでモスクワ五輪に出られなかった瀬古さんが、内定選手を守りたい気持ちはわかります。ですが、情に流されたのは確か。勝てる選手を五輪に送り出すためには、あそこは心を鬼にしなければならなかった。少なくとも、旬の選手を選ぶという趣旨の“第3枠”だけでも白紙にすべきでした」(同)

週刊新潮 2021年3月25日号掲載

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