甲子園にゾウが登場、開会式当日に出場辞退…センバツを巡る“驚くべき騒動”

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ショックで号泣

 女子選手が初めて甲子園のグラウンドに立つ歴史的瞬間が見られたのが、08年の第80回大会だった。21世紀枠で初出場をはたした山口・華陵高の右翼手・高松香奈子は、152センチ、53キロと小柄ながら、男子部員と同じ練習メニューをこなし、練習試合で守備と打席も経験していた。

 だが、3月19日の甲子園初練習では、高野連の規定により、参加を認められなかった。大浪定之監督から「(女子は)グラウンドに入ってはいけない」の通達を聞かされた高松はショックを受け、号泣したが、どうにもならない。気持ちを切り替えると、女子部員として史上初めてユニホーム姿でベンチに入り、タイムキーパーを務めた。

 ベンチでストップウォッチを片手に守備練習を見つめていると、たまたま一塁手が後逸したボールが転がってきた。「おーい、取ってくれ!」の声に反応した高松は、夢中でボールを拾いに行った。この瞬間、ハプニング的ではあるが、女子選手がユニホーム姿で“聖地”のグラウンドに立つ快挙が初めて実現した。

 3日後に行われた開会式では、高松は制服姿で自チームのプラカードを持って入場行進。「拍手と歓声が球場全体に響き渡り、鳥肌が立ちました。一生の思い出になりました」と語っている。

 今年のセンバツでも、グラウンド上の熱戦とは別に、後世に語り継がれるような、もうひとつの“筋書きのないドラマ”が生まれるかもしれない。

※肩書きは当時

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年3月23日掲載

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