バイデンの最後通牒を蹴り飛ばした文在寅 いずれ米中双方から“タコ殴り”に

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2021年3月22日掲載

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「最も弱い輪」の次は日本

――中国はさぞ、喜んだでしょうね。

鈴置:中国共産党の対外宣伝媒体、Global Timesは米韓共同声明が発表された3月18日の夕刻に、いち早く「China-free US-SK joint statement shows Seoul’s rationality, pragmatic consideration of geopolitical interest: analysts」を掲載しました。

 見出しを見るだけで分かりますが「米国は米韓共同声明に対中非難を盛り込むのに失敗した!韓国よ、よくやった。褒めてやるぞ」と小躍りする記事です。

「米国側の駒を1枚、減らした」というだけではありません。「韓国抱き込みをテコに中国包囲網を崩す」作戦を展開できると中国は考えているはずです。

 Global Timesは前日の17日にも韓国に関する評論を載せていました。「S.Korea ‘weak link’ of US strategy to encircle China」です。中国包囲網という鎖を断ち切るには、韓国という最も弱い輪から壊せばよい、との主張です。

 日本企業をいじめる一方、韓国企業は大事にする。すると、日本の経済界から「反中陣営に加わったから我々が損をする」との声があがり、日本という「次に弱い輪」も崩れて行く――とのシナリオを中国は描いているでしょう。

韓国外相が米国に反抗

 米韓2+2が終了した直後、3月18日夕刻には中国を喜ばせるニュースがもう1つ発生しました。鄭義溶外交部長官が聯合テレビのインタビューで「米国は我が国の唯一の同盟国であり、中国は最大の交易国だ。米国と中国の間で両者から1つを選ぶのはありえないことであり、そんな接近法は不可能と考える」と語ったのです。

 こうした発想は韓国では珍しくありませんが、外交部長官が米韓2+2の直後に言い放ったのにショックを受けた韓国人も多かった。「何と言われようと、中国包囲網には加わらない」と米国に向かって韓国政府が公式に宣言したのも同然ですから。

 聯合ニュースの「鄭義溶、『我々にとって米国も中国もいずれも重要…二者択一は不可能』」(3月18日、韓国語版)で発言を読めます。

――米国は踏み絵を突き付けた結果、ソッポを向かれてしまいましたね。

鈴置:それは織り込み済みだったと思います。文在寅政権の中枢部は反米左翼が占めています。大統領自身も「米帝国主義が諸悪の根源」と断じる本を愛読し、国民にも勧めています(『米韓同盟消滅』第1章第1節「米韓同盟を壊した米朝首脳会談」参照)。

 「米国か、中国か」と踏み絵を突き付ければ、こうした反応が返って来るのは十分に予想できました。

「次」の親米政権に期待

――では、なぜ……。

鈴置:ブリンケン長官が踏み絵を突き付けた相手は文在寅政権ではなく、韓国の国民だったのだと思います。韓国人一人一人に「我々と肩を並べて中国と戦う覚悟があるか。中立という選択はないぞ」と言い渡したのです。

 何を言おうが反米路線を変えない文在寅政権を相手にしても意味はない。それよりも1年後――2022年3月の大統領選挙で親米政権が誕生するよう画策した方が合理的なのです。

 「中立を許さない厳しい米国」との姿勢を示せば選挙で反米左派候補の票を減らし、親米保守候補を後押しできます。現にブリンケン発言に驚いた保守系紙は「米国側に戻ろう」と叫び始めたではありませんか。

 逆に、「離米従中にも怒らない米国」を続ければ、「二股外交も可能」と判断した韓国人は安心して左派候補に投票できる。「甘い顔をする米国」は、反米左翼政権の永続を助けることになるのです。

 菅義偉政権も同じことを考えているようです。反米反日で確信犯の文在寅政権とは交渉などしない。「約束を平気で破る国」との交渉は意味がないからですが、仮に交渉するとしても、海洋勢力側に戻る可能性のある政権とせねば、敵に塩を送ることになるのです。

 日米は「文在寅は相手にせず」で呼吸を合わせています。もし、米国が文在寅政権との間で話し合いを進めるつもりなら、日本に対し「韓国に譲歩してやれ」と言ってきてもおかしくなかった。

 実際、韓国政府は今回の日米2+2で「韓国との話し合いに応じない日本を米国が叱ってくれる」と期待し、韓国記者にもそう説明していた。しかし現実は「日本を叱ってくれる」どころか、韓国に踏み絵が突き付けられてしまった。

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