基準が曖昧すぎる…センバツ「21世紀枠」の選考方法は早く見直すべきだ

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「ワイルドカード」が妥当

 ここまでは21世紀枠について否定的な意見を述べてきたが、もちろんプラスの面もないわけではない。昨年、中止となった選抜の代替として8月に行われた交流試合では21世紀枠で出場した帯広農が、全国屈指の強豪校である健大高崎を破っていた。これがきっかけで卒業後も野球を続ける部員が出てきたという話がある。与えられた機会を生かしたことで、選手が自信を持ち、次の成長意欲に繋がった好例と言えるだろう。

 そういう意味では機会に恵まれないチームにチャンスを与えるという制度は意義のあることである。スポーツの世界では「ワイルドカード」と呼ばれる特別枠が設けられることは決して珍しいことではない。

 改めるべきは、やはり選考方法だ。現在の極めて曖昧なものではなく、秋季都道府県大会のベスト16以上(加盟校が129校以上の都道府県はベスト32以上)からシンプルに抽選で全国9地区の候補を選ぶことを提案したい。

 その9校で本大会前に予選を行い、上位3校を選抜大会に出場させるのだ。勝ち残ったチームということで、実力差の問題はある程度は改善し、また本大会前に公式戦を戦えたという経験もプラスに働くはずである。名称自体も「21世紀枠」ではなく、国際基準に合わせて「ワイルドカード」とするのが妥当ではないだろうか。

 高校野球は教育の一環とよく言われるが、グラウンドで行われる野球自体はあくまでスポーツであり、そこに異なる価値基準を持ち込むことはやはり不自然である。教育上もプラスに働いているとは思えない現在の21世紀枠の選考方法は一日でも早く見直すべきだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月18日掲載

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