楽天に1500億円出資する日本郵政 政・官・業の癒着という見方さえある問題点

ビジネス 企業・業界 2021年3月16日掲載

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「喉から手が出るほど欲しかった」

 3月12日、日本郵政グループは楽天に1500億円を出資し、業務提携すると発表した。「最高のパートナー」「オンラインとオフラインの融合で新たな価値提供へ」「郵便局に楽天モバイルカウンター設置を検討」などと、好意的に受け止める記事がネット上に流れている。しかし、「そんな綺麗事で済む話ではない」という声が、通信業界に詳しい事情通から上がっている。

「楽天が参入した携帯電話事業のエリアを全国に広げるためには、兆円単位のお金がかかります。にもかかわらず、足元は大きな赤字決算で、投資資金が喉から手が出るほど欲しかった。その一部を日本郵政が融通した格好です」

 大手新聞のデスクの解説を聞こう。

「2月12日に発表した2020年12月期決算は、当期利益が1141億円の赤字と前年の330億円の赤字から大幅に悪化しました。一見、キャッシュフローは潤沢なように見えますが、これは銀行や証券など金融事業に伴うもので、非金融事業は1000億円近いマイナスです。

 決算の補足資料では、モバイル事業の四半期ごとの営業損失はどんどん膨らんでいて、10-12月の第4四半期だけで725億円の赤字を出しています。基地局建設の計画前倒しに伴い、基地局関連コストが増加したためと説明しています」

 楽天は今回、日本郵政からの1500億円に加えて、中国ネット大手テンセントの子会社から657億円、米ウォルマートから166億円、三木谷浩史社長の資産管理会社である三木谷興産から100億円の合計2423億円を調達する。日本郵政とのEコマースや物流での協力など、業務提携の中味ばかりが強調されているが、実のところ、楽天の資金繰りが狙いだったことは明らかなようだ。

一私企業に資金を投じるようなもの

「そもそも、日本郵政が楽天に出資することが問題ではないか」

 と、企業のガバナンスに詳しい大学教授は指摘する。

「日本郵政は政府が株式の63%を持つ、いわば国の子会社のようなものです。つまり国民の財産と言えるわけですが、その資金を一私企業に投資することには慎重であるべきです。しかも、楽天は上場しているとはいえ、まだ創業者の三木谷浩史氏や家族、資産管理会社が実質的な筆頭株主で、三木谷氏が会長兼社長として絶対的な権限を握っています。いわば三木谷氏個人の会社と言ってもいい。そうした会社に国民の資産を投じるわけですから、問題視する声が上がるのも当然でしょう」

 さらに、総務省を長年取材してきた大手メディアのベテラン記者も、憤懣やる方ない様子で語る。

「日本郵政との提携で物販EC事業を強化すると言っていますが、発表資料をよく読むと、手数料を除いた全額の2400億円を、楽天モバイルの基地局設備に投じるとしています。日本郵政は事業計画を総務省に申請して、認可を得なければならないなど、言うまでもなく総務省の管轄下にあります。楽天が参入した携帯電話事業も総務省の管轄下です。総務省が郵政から楽天に投資させたようなもので、国が楽天の基地局建設に資金を出したも同然でしょう」

 日本郵政は保険の不正販売で民間出身の社長が辞めた後、元総務大臣の増田寛也氏が新社長に就任した。総務省は不祥事を理由に邪魔だった民間人経営者を追い出し、総務省支配に戻す念願を達成したとされる。

「先にも述べたように、そんな日本郵政の株式の過半数を持っているのは国ですから、日本郵政の経営者の人事は国が行った人事と言えます。もちろん、楽天への出資も増田氏だけで決断できるわけではなく、大株主として拒否権や監督権限を持つ国、つまり内閣や総務省が了解しなければ実現しません」(前出の教授)

 先のベテラン記者氏も憤る。

「増田さんは菅義偉首相のイエスマンですし、三木谷さんも安倍内閣の時から政府の会議の委員を務めるなど菅首相とも近い。今、例の接待問題で総務省と業界、そして総務大臣を含めた政・官・業の癒着が指摘されている中で、よくぞこんな決断をしたものですね」

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