緊急事態宣言は完全無視…コロナ禍でギャラ飲みに励む「港区女子」の呆れた実態

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 3月7日までを予定していた1都3県を対象にした緊急事態宣言は、2週間延長されることになった。再延長の賛否はさておき、自粛なき“夜遊び”がコロナ禍の収束を妨げているとしたら、たまったものではない。作家の酒井あゆみ氏が、緊急事態宣言下でLINEを舞台に繰り広げられる「ギャラ飲み」事情を明かす。

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 これまで20年以上にわたり、夜の世界の女性たちを取材してきた。情報収集の一環として、数年前からギャラ飲み(=お金をもらって男性と飲む行為、「フリーランスのキャバクラ嬢」をイメージしてもらえば分かりやすいだろうか)相手らを募集するLINEグループに身分を伏せて参加し、そこでのやりとりを観察してきた。本稿で紹介するのは、緊急事態宣言の再延長が発表された3月5日前後にLINEグループに投稿された実際のメッセージである。

 私が参加しているLINEグループはふたつある。どちらも1000人を超える登録者がおり、基本的には女性のみ。グループの主催は、ともに六本木にあるバーラウンジの経営者だ。どちらもグループ名に「港区女子」とつけられている。

 なぜバーの経営者がそんなグループを運営するのか。もともとは、ギャラ飲みの会場に自分の店を使ってもらうための手段であったようだ。ひいきの男性客が来店した時に、このLINEを使って今から来られる同席相手の女性を募集していたわけである。

 基本的に営業は20時までのはずの緊急事態宣言下でも、こうした飲食店はこっそりと深夜まで営業している。だからLINEグループには、今もバー経営者からの「今から来れる子」募集投稿もある。だがいまやLINEグループは「店」を離れ、女性が女性に声をかける“募集掲示板”的な様相を呈している。後述するが、その内容も「ギャラ飲み」に留まらない。

 実際の投稿を見てもらったほうが早いだろう。なお、足がつくのを恐れるため、募集投稿は一定時間が経つとすぐに削除されてしまう。以下は私がスクリーンショットで保存したものだ。

〈21時から2時間1西麻布1名 お酒飲めるノリのいい子で ショット飲める子だといいです〉

〈21時西麻布 3名ノリよいこ!気に入られたら延長あります!〉【投稿1】

 いわゆるオーソドックスなギャラ飲みのお誘いである。前者は2時間1万円での募集、後者は値段の提示はないが、ともに西麻布が会場であるとわかる。希望者はこれらの投稿者(モザイク処理をしているが、前者は女性の顔のアイコンである)に個別に連絡をとり、詳しい条件を聞くわけだ。

 もっとも、誰でもいいという訳ではもちろんない。【投稿1】では当たり前すぎて省略されているようだが、基本的には募集の時点で“事前審査”が行われ、

〈今から六本木2名 写真と共にお願いします〉【投稿2】

 のように、容姿の条件をクリアしなければならない。なかには、

〈なる早六本木ミッドタウン前 2時間1マン2名 写真と共にお願いします 現物と違すぎたらお返しする可能性ありますのでご了承ください〉【投稿3】

 のようなシビアな募集もあるが……。

 【投稿2】は〈今から〉、【投稿3】は〈なる早〉とあるように、募集は突然始まることが多い。ギャラ飲みはスピードが求められるのだ。しかも募集は、だいたい20時から朝方までという時間帯である。となれば稼ぎたい女子たちは、会場になることが多い六本木周辺で“待機”をする必要がある。飲食店関係者がグループの主催になるのは、彼女たちの待機場所として店を使ってもらえるから、という事情もあるのだ。

〈大人最低5~7〉

 ここまで見てきたのはあくまでギャラ飲みの募集である。さらにこのグループは、ほかの目的に使われてもいる。この投稿が分かりやすいだろう。

〈(1)ギャラ飲みOnly (2)お触り等有り(チップ発生はします。)(3)ギャラ飲み+大人最低5~7〉【投稿4】

 こちらも投稿は女性である。彼女は3つの募集を同時に行いつつ、

 〈※私もたぶん居ると思います。〉

 と自らも参加するつもりらしい。〈既読付いたらエントリー完了〉と、その手慣れたやり方から察するに、だいぶベテランであるようだ。注目は〈大人最低5~7〉という部分。これは5~7万円で「大人の関係」の女性を募集している、ということを意味する。

 私はコロナ禍前から港区女子のLINEグループをウォッチしてきた。コロナ以前との違いで感じるのは、募集内容の“濃さ”である。こうした大人の関係を求める募集はいまや当たり前になり、ほかにも、複数人での行為を前提とした募集や、まるで品定めをするように、女性の容姿に露骨な条件を求めるものも散見される。

〈v女優or芸能系募集 p希望額出せると思います〉【投稿5】

 これもパパ活の募集。〈v女優〉が何を示すかは、頭にAを付けてもらえればわかるだろう。この投稿からもわかるように、LINEグループの参加者には、芸能関係の女性たちが多い。ほかにもキャバクラ、夜の店の経験者も少なくない。

 その点、別のグループLINEを主催する知人が「コロナ以降はキャビンアテンダントの子がグループに増えた」と言っていたのは興味深い。身分をはっきり明かしているわけではなく、統計もないため、彼(やはり港区の飲食店関係者だ)の肌感覚ではある。とはいえ先日もコロナで経営が悪化したJALとANAが、人件費削減のため社員を家電量販店に出向させるとニュースになっていた。働き場を失ったキャビンアテンダントの女性が、ギャラ飲みで糊口をしのいでいることはあり得る話だろう。

 では、彼女たちと同席する男性たちは、いったいどんな人たちなのか。前提として、彼らはコロナ禍では堂々と遊びにくいため、LINEグループを通じて集まった女性たちと“お忍び”で遊ぶわけである。ゆえに素性ははっきりとは分からず、また上記の知人にとっても“大事なお客さん”であるため、詳しいことは教えてもらえない。だが、

〈経営者層のみの極秘会員制P活案件 1億以上稼がれている経営者層のみ 東京出張の際にお相手して頂きます〉【投稿6】

 という投稿からは、東京都内にいきつけの店がない、あるいは深い関係の女性のいない男性が、後腐れなく遊ぶための需要が見えてくる。後腐れないという点では、“過去の募集で来た女性はNG”という募集も稀に見かける。色んな女性と遊びたいという目的もあるだろうが、同時に必要以上に親しくなることで身バレし、立場が危うくなるのを恐れているのだろう。

 港区外の利用者という意味では、

〈Vの子で中国人いける方 Vの名前と希望額お写真お願いします〉【投稿7】

 というのは、その究極であるといえよう。もっとも、金払いのいい海外案件はコロナで減ってしまったと、知人は愚痴っていたが……。

 不要不急の外出は控えて欲しいと行政が呼びかけたところで、夜遊びをしたい人間にはまったく意味がないというということだ。コロナ禍が収束しない背景には、彼/彼女たちが夜な夜な繰り広げる乱痴気騒ぎの影響も少なからずあるはず。自粛に応じている一般市民からすればたまったものではない。

 もっとも、コロナで稼げなくなり、こうしたLINEのグループに頼らざるを得ない女性たちには女性たちなりの事情もあり、同情の余地がないわけではない。3月23日発売予定の拙著『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』(コスミック出版)では、そんな女性たちの真実を紹介している。

酒井あゆみ(さかい・あゆみ)
福島県生まれ。上京後、18歳で夜の世界に入り、様々な業種を経験。23歳で引退し、作家に。主な著作に『売る男、買う女』『東電OL禁断の25時』など。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月12日掲載

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