のこぎりで76歳「妻」が83歳「夫」を殺害 20年前に容疑者を激怒させた夫の所業とは

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共働きで二人の子供を育て上げた妻

 取材を続けると、30年来、妻と交流があるという人物に行き当たった。知人はこう振り返る。

「あの人は聡明な人で、自分の主義主張を絶対に曲げない人。人の話を聞かない頑固なところがありましたね。若い時は、辻堂駅前のスーパーで売り場を任されるような立場で頑張って働いていました。そうやって子供二人を育て上げたからこそ、旦那さんに対する積年の恨みが募っていたのでしょう」

 近所では大人しい人で通っていたが、気を許した相手には立ち話が止まらなかったという。

「ただ、プライバシーを大事にする人で、あまり家族については話したがらなかった。それでも夫に対する不満は何度か漏らしていました。何が原因かわかりませんが、夫妻は、20年くらい前に一度、離婚しています。旦那さんが60歳の定年退職と同時に家を出たのです。『退職金も貯金も全部、持ち出して家を出た』と彼女はとても憤っていました」

離婚と復縁

 だが、数年経って、夫は変わり果てた姿で家に戻ってきたという。

「脳梗塞をやってしまって、一人では生活できなくなったのです。その時、間に立ったのが息子さん。『親兄弟もいない父親の面倒を見られるのは自分しかいないから、家に戻させてくれ。俺がちゃんと責任持って面倒見るって』って。『息子にそう言われたら私も反対できなかった』と彼女は話していた」

 だが、復縁したわけではなかったという。

「1階は父と息子、2階は妻と、家庭内別居するようなかたちで生活していました。戻ってきたからといって、彼女は夫を許したわけではなく、『何に使ったのか知らないけど、戻ってきた時には持ち出したお金を全部使い果たしていた』と怒っていた。『女性絡みの恨みだったんじゃない?』ってウワサをする人はいますけど、彼女の口からそんな話を聞いたことはありません。ニュースでは暴力もあったと報道されていましたが、私が聞いていた不満はすべてお金に関するものでした。食事は息子さんがコンビニで買っていると言い、『私はあの人の食事を用意する気になんか絶対なれない』って言っていましたね」

 自宅について調べると、1998年に所有権の2分の1が妻に移されていた。その際、書類上では姓が変わっていた。現在も家の玄関には「丸壽雄」の表札の下に、別姓の表札が掛けられている。知人によれば、彼女の旧姓だという。だが、逮捕時の彼女の名は「丸洋子」だ。子をかすがいにして、その後、復縁したということなのか。

「そんな話は一切聞いていませんでしたので、びっくりしています。最後に彼女に会ったのは1カ月くらい前。家の木がどんどん剪定されて寂しくなっていくから、『あんな切り方しちゃダメよ』ってたしなめたのです。けど、彼女は『こうやって切らないと新しい芽が出ないのよ』って聞く耳を持ちませんでした。コロナで家に閉じこもっている中で、精神的に参ってしまっていたのかもしれません」

 妻は庭の木をのこぎりで切りながら、何を思っていたのだろうか。

デイリー新潮取材班

2021年3月9日掲載

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