ローソンが医薬品のデリバリーを開始 ちょっと不便な販売ルールの壁とは

ビジネス 企業・業界 2021年2月28日掲載

  • ブックマーク

 2月4日より、ローソンは市販の医薬品宅配サービスを一部店舗で始めた。おなじみ「ウーバーイーツ」を活用しての取り組みだ。一見便利な試みだが、さて実用性のほどは……。流通アナリストの渡辺広明氏が解説する。

 ***

 欲しい商品を自宅に直接持ってきてくれる配送サービス。コンビニ業界では、ローソンがセブン-イレブンやファミリーマートより一歩先んじている印象です。19年8月にサービスを導入したローソンでは、現在、1500店以上がウーバーイーツに対応しています。

 以前「ウーバーイーツ、人気ナンバー1は『からあげクン』 なぜわざわざ頼む?」(2020年8月25日配信)でも解説しましたが、ローソンの「からあげクンレッド」は、ウーバーイーツ全体で最も売れた商品になっています。食料品だけでなく、日用品も配達対象の「ローソン」は、ウーバーイーツと相性が良いのです。

 そして今回、配達対象品に医薬品も加わりました。もともとローソンは「健康」志向の強いコンビニチェーンです。“美と健康をサポート”を売りにするナチュラルローソンブランドがありますし、18年には「遠隔医療を受けられるコンビニ」構想も発表しています。また医薬品の取り扱いついては、09年の薬事法改正のタイミングで、「マツモトキヨシ」や「クオール薬局」と提携する形で参入していました。

 医薬品デリバリーは「ゲートシティ大崎アトリウム店」「荏原町駅前店」「久が原一丁目店」の3店舗から実験的にスタートしました。隙間時間のあるギグワーカーを活用したこの取り組みは、コンビニの人手不足問題の解決策のひとつになりうる、たいへん良い施策だと思います。

 ただ、現状の体制で実用性があるかというと、疑問が残ります。理由は単純。本当に欲しい時に買いにくいからです。

「バファリン」は売り切れていたが…

 コンビニの日用品は基本的に定価販売です。スーパーやディスカウントストアに行けば、同じ商品をもっと安く買うことができます。それでもコンビニで日用品が売れるのは、“緊急購買”で買われるケースが多いからです。急にボールペンが必要になったから、あるいは洗剤を切らしていることに気づいて……という需要です。それが、ウーバーイーツで自宅まで配達してもらえるから、より助かる。これがローソンの取り組みの最大のウリでしょう。

 緊急購買という点は薬も同じ。急にお腹が痛くなった、発熱で動けない、そういう時に薬の配達は求められるわけですが、しかし、ふつうの日用品と違い、こちらは欲しい時に買いにくい。登録販売者がいるごく一部の店舗で、勤務している時間帯にしか注文できないからです。それは店頭の販売も、今回の配達サービスでも同じ。商品のピックアップ、そしてウーバーの配達員に品物を渡すのも、登録販売者しか許されていないのです。

 医薬品配達に対応している「ローソン荏原町駅前店」を見てみると、ウーバー上の医薬品の対応時間は「8:00 AM -9:30 PM」となっています。一方、そのほかの「からあげクン」や日用品は「11:59 PM」までの対応です。

 こちらの店舗では「ルルアタックEX」や「パブロンゴールドA」などの風邪薬や、花粉の時期にはお世話になる「アレグラ」や「アレジオン」といった薬、「液体ムヒ」などが販売されています。これらは登録販売者がいないと購入ができません。私が確認した時点では、解熱鎮痛剤の「バファリンプレミアム」が売り切れていました。“急に頭が痛くなって”の需要による、緊急購買であることが窺えます。

 とはいえ、これらはすべて定価での販売です。価格ではドラッグストアには敵いませんし、ひょっとすると「8:00 AM -9:30 PM」の時間帯ならば、近所のドラッグストアが開いている可能性もあります(たとえば荏原町駅前店のすぐ近くには、朝10時から夜の22時半まで登録販売者がいるドラッグストアがありました)。

 さらに現在ではネットでも大衆薬は他の商品と同じように購入でき、そちらもやはりディスカウント価格です。うっかり花粉の薬を切らしてしまった時のような「ドラッグストアもオープンしていない時間に、定価でもいいから薬が欲しい」需要に答えられてこそ、ウーバーイーツでの医薬品配達サービスの意義があると思うのですが……。

 ただし今回のローソンの取り組みは、コンビニの配達サービスを深化させたという点で、高く評価できるものです。現在のインターネット通販で対応できないものに中食(総菜や弁当類)があります。中食を中心とする日常の食事と、薬を含む日用品を同時に宅配してくれるサービスは、世界的に見ても、まだ大きな成功事例がありません。ローソンが発展させている配達サービスは、コンビニの未来のひとつの形です。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

デイリー新潮取材班編集