日本マクドナルド、去年の営業利益は過去最高、どん底から復活させた「3人の経営者」

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 新型コロナ禍で外食業界が苦境に立たされている中、日本マクドナルドは2月9日、2020年12月期決算で全店売上が5892億円と、2年連続して創業以来過去最高となったことを発表した。営業利益は312億円で、こちらも9年ぶり最高益を記録。21年12月期には、6130億円の全店売上を見込む。専門家が好調の原因を分析した。

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 緊急事態宣言など、外出自粛ムードの影響で日本マクドナルドの客数はマイナス8.5%と1割近く落ち込んでいる。ところが、客単価は16.7%も増加しているのである。これはデリバリーやテイクアウトで、複数人分のまとめ買いが増えたからだという。

「まさに巣籠需要ですね。日本マクドナルドは早くからデリバリーに取り組んでいましたから、コロナ禍が追い風となったのです」

 と解説するのは、ビジネス評論家の山田修氏。

「ただ、過去最高の売上や利益を計上したのは、コロナによる追い風だけではありません。サラ・カサノバ会長の経営手腕によるところが大きいのです」

 日本マクドナルドの最近の業績を見てみると、11年の3023億円をピークに年々売上が落ち、15年には1895億円まで落ち込んだ。その年は347億円もの最終損失を計上。そこからV字型に回復しているのである。

「最終損益がV字型に回復するのは珍しくありません。大幅なリストラや不採算部門をカットすれば利益が出るからです。しかし、売上をV字型に回復させるというのは、並大抵のことではありません」

“壊し屋”

 日本マクドナルドが2015年に売上が底をついた原因は、04年、社長に招聘された原田泳幸(えいこう)氏と言われている。今年2月、妻を殴った疑いで逮捕されたあの御仁だ。

「彼は日本マクドナルドに来る前は米アップル本社の副社長を務めていたため、当初、大物経営者として評価されていました」

 社長に就任した2004年から8年連続で既存店の売上増を達成し、“原田マジック”ともてはやされたが、11年の東日本大震災を境に暗転する。

「“壊し屋”という異名を持つ原田氏の手法は、これまで培ってきたものを破壊すること。たとえば、フランチャイズ(FC)店のスタッフの教育・研修システムを変え、品質管理や研修を行っていた本社の『ハンバーガー大学』を活用しなくなりました。そのため、アルバイトのモラルが低下し、客離れを招いたのです」

 2012年には、レジカウンターからメニュー表を撤去する。

「彼は自分が思いついたアイデアを実行する際、顧客の利便性には考えが及ばない人です。顧客の待ち時間を短縮するためとメニュー表を撤去したものの、不便になっただけで不評を買いました。さらに、2013年には、店員が60秒以内に商品を提供できなければ、無料クーポンを渡すという“60秒ルール”を作って、現場を混乱させました」

 また、原田氏は店舗の24時間営業も推奨したが、これも裏目に。清掃が行き届かずに店舗が荒れ、SNS上でもたびたび問題になった。

 2013年8月、原田氏は会長に、カサノバ氏が社長兼CEOに就任する。

「カサノバ氏が社長に就任した当初は、いばらの道でした。2014年にはマックナゲットを作っていた中国のメーカーが、賞味期限切れの鶏肉を混ぜていたことや不衛生な調理を行っていたことが発覚したのです。さらに15年にはビニール片やプラスチック片、ヒトの歯などの異物混入が相次いだため、過去最大の赤字を計上しました」

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