“微罪”で続けて2度逮捕された埼玉在住「20代男」にマスコミが注目するワケ

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「三郷市火災予防条例違反」。昨年11月、男が最初に逮捕された罪状である。その後、男は「消防法違反罪」で起訴され、2カ月もの間、起訴後勾留されていた。そして2月15日に「公記号偽造罪」で再逮捕された。いずれも馴染みのない罪状で、新聞ではベタ記事にすらならない事件であろう。だが、いま事件記者たちは、この男の動きに大きな関心を寄せているのである。

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囁かれる「未解決事件」との関連とは……

 男が移送されてきた茨城県警境警察署は、大勢のカメラマンや記者でごった返した。

 2月10日、茨城県警は、埼玉県三郷市に住む20代の男を「公記号偽造罪」の疑いで再逮捕した。同罪は、警察などの役所が使用している記号を偽造する罪で、男には自宅に偽造した警察手帳を隠し持っていた容疑がかけられている。なぜ、このような“微罪”で逮捕された男にメディアが注目するのか。新聞社の事件担当記者が明かす。

「県警は男が、2019年9月に茨城県境町で発生した一家4人殺傷事件について、何らかの事情を知っていると睨んでいるのです」

 雑木林に囲まれた「ポツンと一軒家」のような現場で発生したとして、当時、ワイドショーなどで騒がれた、あの凶悪事件だ。会社員の小林光則さん(当時48)と妻の美和さん(当時50)が殺害され、長男と次女も重軽傷を負ったが、いまだ犯人は捕まっていない。

 男は、捜査本部のある境署に、なかば“重要参考人”扱いで移送されたという。

最初の容疑は「殺人予備罪」だった

 事件記者たちがこの男に注目するようになったのは、三か月前に遡る。昨年11月19日、埼玉県三郷市の古い民家が立ち並ぶ住宅街の一角にある男の自宅に、早朝から50人以上のマスコミが駆けつける騒ぎとなった。

「埼玉県警と茨城県警が、『殺人予備罪』の容疑で男の自宅に家宅捜索に入ると聞きつけたからです。直前に境町の事件に関連する捜査だとウワサになっていた。翌日、両県警は男を『三郷市火災予防条例違反』で逮捕しました。男の家から45キロの硫黄が見つかった容疑でした」(同・記者)

 なぜ当初の「殺人予備罪」ではなく「条例違反」での立件になったかというと、

「警察は令状を取った段階では、男が爆弾を作るため薬物を大量に購入しているとの情報をキャッチしていた。だが、結局ガサで見つかった危険物は硫黄だけ。これでは殺人予備罪が成立しないという判断だったのでしょう。そもそもこの強制捜査は、茨城県警から埼玉県警に、男の自宅に危険物があると情報提供があって始まりました。当然、このような県をまたいだ合同捜査なので、警察庁も間に入っています」(同・記者)

 男は20日間の満期勾留を経て、「消防法違反」で起訴された。その後、2カ月もの間、起訴後勾留されていたが、このほど茨城県警に移送されて、自宅にニセ警察手帳があった容疑で再逮捕されたのだった。

 消防法違反罪も公記号偽造罪も、罰則は最も重くて懲役3年である。このような軽微な犯罪であるにもかかわらず、男は逮捕から3カ月近く勾留され続け、さらには茨城まで移送されたのである。まさに“異例の捜査”といえよう。

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