日米首脳の「ヨシ」「ジョー」呼び 「ファーストネーム外交」の歴史

国内 政治 週刊新潮 2021年2月11日号掲載

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 会見を開けば支持率が下落し、国会で答弁すれば“言葉が伝わらない”と批判される。一向に“リーダー”ぶりが板に付く気配のない菅義偉総理(72)だが、1月28日に行われたバイデン米大統領(78)との電話会談もイマイチだったよう。

「アジアで最初の電話会談ということばかりが強調されていましたが、実際は、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシアなどの後塵を拝した。しかも“呼称”の問題ばかりが注目され、肝心の中身はさっぱりです」(政治部記者)

 呼称の問題とは、会談中、両首脳が申し合わせた「ヨシ」「ジョー」というお互いの呼び方。

「打ち解けた雰囲気を演出しようと目論んだものの、世間に意図が見透かされ、支持率アップの狙いも空振り。外務省と米国務省との間で事前に擦り合わせが行われてのことですが、菅氏が“ジョー”と口にする違和感から、すべて裏目に出てしまった」(同)

“ファーストネーム外交”といえば、中曽根康弘総理とロナルド・レーガン米大統領とのロン・ヤス外交があまりに有名。しかし、

「この“蜜月”も外交当局による政策的なものでした」

 と、京都大学名誉教授の中西輝政氏。

「中曽根氏の前の鈴木善幸内閣で日米関係は極めて悪化。そのような中、党内基盤が弱く、アメリカとの良好な関係で政権を盤石にしたかった中曽根氏と、冷戦が激化し日米同盟を強固なものにしたかったアメリカとで利害が一致したのです」

 実際、元共同通信ワシントン支局長の春名幹男氏も、

「レーガン氏は殆どの外国首脳をファーストネームで呼んでいましたから、中曽根氏だけが特別だったわけではありません。ところが、ロン・ヤスのフレーズが日本のマスコミで持て囃されたことから、以後、外務省も引くに引けず、いまだにファーストネーム外交のお膳立てが続いているのでしょう」

 近年は“シンゾー・ドナルド”なんて例もあったが、

「トランプ氏は特殊な例。彼はお気に入りのジョンソン英首相のことも“ボリス”とファーストネームで呼んでいましたが、イギリスでそれが持て囃されたとは聞きません。特殊といえば、安倍前総理がロシアのプーチン大統領を“ウラジーミル”と呼んだことがありましたが、ロシアではファーストネームだけでなくミドルネームのような父称もつけて呼ぶのが通例です」(中西氏)