筑波大生不明事件、捜査報告書に残るチリ人容疑者の「偽装工作」と「脅迫ビデオ」

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 フランス東部のブザンソンにあるフランシュ・コンテ大に留学中だった筑波大生・黒崎愛海(なるみ)さんが行方不明になったのは、2016年12月のこと。フランスの地元警察は、直ちに元交際相手のチリ人ニコラス・セペダ容疑者(30)を殺人などの容疑で国際手配した。昨年7月、逃亡先のチリからフランスに身柄が引き渡され、今月2日、フランスの予審判事が殺人罪で起訴、早ければ今秋から裁判が行われる。しかし、未だ黒崎さんの行方は明らかになっておらず、セペダは一貫して無罪を訴えているのだ。果たして裁判の行方はどうなるのか。

 黒崎さんが最後に目撃されたのは2016年12月4日、大学のあるブザンソンから20キロほど離れたオルナンのレストランだった。フランスの画家、ギュスターブ・クールベの代表作『オルナンの埋葬』で描かれたことでも知られる景勝地である。セペダを含む複数の知人と食事をしていたという。

 午後11時過ぎに店を出た2人は、セペダが借りたレンタカーで黒崎さんの大学の寮に向かった。日付が変わった5日午前3時20分、黒崎さんの部屋がある2階から女性の悲鳴が上がったのを複数の寮生が耳にしている。防犯カメラには寮に入っていく2人の姿が映っていたものの、寮を出る姿は捉えられていなかった。

 その後、セペダは7日に列車でフランスを出国、スイス、スペインを経てチリに帰国。同月26日、国際手配された。

僕は君と結婚したかった

 セペダは裕福な家庭に育ち、チリ大学に進学。2014年4月から15年3月まで特別聴講学生として筑波大に留学した際に黒崎さんと知り合い、交際するようになった。チリへ帰国した後も黒崎さんに会うために、何度も来日している。

「エチエンヌ・マントー検事は、チリの司法当局に詳細な捜査報告書を提出しています」

 と語るのは、フランス在住のジャーナリスト、広岡裕児氏。

「その報告書によると、セペダは黒崎さんをチリに招待して両親に紹介し、結婚しようと思っていたようです。しかし、黒崎さんはセペダとの関係を解消しないまま、フランス留学中の2016年8月、筑波大学に1年の留学経験があるアルチュールという若い男性と親しくなっていました」

 検察は2016年8月28日から10月8日まで、2人の間で交わされた980ものメッセージを詳細に分析。黒崎さんのボーイフレンドとなったアルチュールの存在が、セペダをひどく苛立たせたことを明らかにしている。
 
 例えば、黒崎さんがセペダに海外留学を台無しにされたと非難するメッセージを送った際には、セペダから〈私たちが構築したすべてが嘘によって破壊されるのを見るのはとても悲しい。LINEとFacebookから3人の男を消すという約束を見てみたい〉という返信を受け取っている。

 ほかにも、黒崎さんが〈私は決してアルチュールを削除することはない〉と告げた際、セペダは〈僕は君と結婚したかった、家、家族を作りたかった〉と答えた。さらに、〈彼女は彼女がしたことの代償を払わなければならない。責任を負わなければならない〉と、脅迫じみたビデオを送っていたこともあったという。

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