腐女子が夢中の「ヒプマイ」って何? ファンが大金を注ぎ込みたくなる“仕掛け”

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“オタク女子”を虜にする”ストーリー”とは…

「ヒプマイ」。おじさまたちには耳慣れないワードかもしれない。だが、いま世の“オタク女子”たちはこの音楽コンテンツに夢中で、同じCDを何枚も買うなど、惜しげもなく大枚をはたいているというのだ。彼女たちを虜にする「ヒプマイ」現象とはいったい……。四十路半ばの男性記者が取材した。

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 正式名称は「ヒプノシスマイク―Division Rap Battle―」。「音楽原作キャラクターラッププロジェクト」なる枕詞がつく。18人のアニメキャラクターを演じる男性声優たちが、“ラップバトル”を繰り広げていくという企画だ。

「キングレコード内の音楽レーベル『EVIL LINE RECORDS』が制作を手掛け、2017年にスタートしたプロジェクトです。じわじわと“オタク女子”を中心に口コミで浸透し、19年には大阪城ホールでライブイベントを開催するほどの人気グループに成長しました。今年1月19日に発売したアルバムは初週で売り上げ4万枚を突破。オリコン週間アルバムランキングで初登場1位と勢いが止まりません」(レコード会社関係者)

 好きなアイドルや歌手のレコードやCDを購入し、応援して楽しむことは、いつの時代もあっただろう。だが、この「ヒプマイ」は、一味違った魅力があるという。

「もちろん私たちは歌い手である声優さんも好きなんですが、どちらかというと彼らが演じるキャラクターとストーリーの虜になっているんですよ」

 こう“ヒプマイフィーバー”を解説してくれるのは、ファン歴3年という出版社勤務のみゆきさん(28)だ。ストーリーとは何なのか。彼女が指し示した「ヒプマイ」の公式ホームページには、こんな文章が載っていた。

〈H歴。武力による戦争は根絶された。争いは武力ではなく人の精神に干渉する特殊なマイクにとって代わった。その名も「ヒプノシスマイク」。(中略)人々はラップを使い優劣を決する。(中略)兵器ではなく言葉が力を持つことになった世界で今、男たちの威信をかけたディビジョンバトルが始まる〉

 みゆきさんが続ける。

「ざっくり説明すると、18人の男たちが“ディビジョン”と呼ばれるチームに分かれてラップバトルするんです。『イケブクロ』『シンジュク』『シブヤ』『ヨコハマ』『オオサカ』『ナゴヤ』の6つがあって、それぞれにメンバーが3人います」

 なんとも奇怪なシチュエーションだが、この世界観が彼女たちを魅了しているという。

「男性だって荒唐無稽なセクシービデオが好きでしょう」

 ちなみにみゆきさんは、有名私立大学の修士号を持つ才媛である。このファンタジーにどのくらい共感しているのかと聞くと、ムッとした表情でこう返した。

「もちろん、この設定がお遊びだってことはわかっていますって。男性だって、学生寮に入寮したら住人全員がセクシー女子大生だった、みたいな荒唐無稽なビデオを好んで観るじゃないですか。それと同じです」

 なるほど……。ともあれ、百聞は一見にしかずということで、みゆきさんが親友の主婦・綾子さん(29)の自宅でライブ配信上映を見るというので、お邪魔することにした。

 1月31日午後4時、AbemaTVでライブ配信が始まった。舞台に出てきたのは6人の男性たち。おや、一人には見覚えがある。毎朝、記者の息子が観ているテレビ東京の子供向け番組「おはスタ」に出ている青年ではないか。

 綾子さんが教えてくれた。

「木村昴くんですよ。私がイチオシの『イケブクロ・ディビジョン』のリーダー『山田一郎』役で、このプロジェクト全体のリーダー的存在です。この声で気がつきませんか? 『ドラえもん』のジャイアン役もやっている声優さんですよ。カッコいい!」

 一方のみゆきさんは、対する「オオサカ・ディビジョン」推しとのことで、「オオサカがんばれ!」と、終始鼻息が荒い。

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