法律が変わった「遺言書」の注意点 身内との“争続”を避けるポイントとは

国内 社会 2021年02月01日

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 人生のエンディングに差し掛かった時、配偶者や子どもへ何をどのように遺すか。最後のメッセージとなる「遺言書」を巡る“争続”は後を絶たないが、先般の相続法改正で、その仕組みが大幅に変わった。今回は、実際に遺言を作成する上で留意すべき点をお伝えする。

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 最高裁判所がまとめた司法統計年報によれば、被相続人が亡くなった後の親族間による“争続”のうち、財産5千万円以下のケースがおよそ4分の3を占め、さらに3分の1は1千万円以下だという。すなわち、骨肉の争いは決して富裕層のものではなく、むしろ一般家庭において多く生じているというわけだ。

 2018年の7月、相続法が38年ぶりに大きく改正され、一昨年1月から順次、新制度が施行されている。その中には、遺言に関する事項も含まれているのだが、

「民法上、遺言の方式には『普通方式』と、死期が迫った時などに緊急に作成する『特別方式』とがあり、一般的には普通方式が用いられます」

 そう話すのは、相続問題に詳しい法律事務所アルシエンの武内優宏弁護士。この普通方式は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」に大別され、中でも広く用いられているのは「自筆」「公正証書」の二つである。

「このうち、今回の改正では自筆証書遺言について新たな制度が設けられました。まず従来、自筆証書遺言では、遺言を残す人が遺言書の全文と日付および氏名を自書し、これに押印する必要がありました。従って、日付が抜けていたり遺言者以外の人が代筆したり、作成したのが遺言者自身であっても一部をワープロで作成するなどした場合は、いずれも無効とされてきたのです」(同)

 それでも、

「高齢者にとって、財産目録などを含めた遺言書の全文を正確に自書するのは大変な作業です。書き間違いなどはあとから加除訂正できますが、遺言者がその箇所を指し示し、変更した旨を付記してこれに署名し、その上で変更箇所に押印しなければなりません。せっかく遺言を残そうにも自筆ではハードルが高く、内容も不十分なものになるケースが少なくありませんでした」(同)

 それが今回、財産目録に限って自筆要件が緩和され、すでに19年1月から施行されている。

「今後は財産目録をパソコンやワープロで作成することができます。不動産については不動産登記事項証明書を添付し、また預金は通帳のコピーを添付して自筆で署名、捺印すれば認められることになったのです」(同)

 遺言書の本文は引き続き自筆でなければならないが、入り組んだ財産目録が簡単に作成でき、通帳のコピーが可になっただけでも“終活”において少なからぬ負担が取り除かれたといえよう。

“たんす遺言”の悲劇

 遺言に関してはもう一つ、大きな改正がなされている。武内弁護士が続けて、

「20年7月から『法務局における遺言書の保管等に関する法律』が施行され、自筆証書遺言を法務局に預けられることになったのです。これまで自筆証書遺言を執行するには、家庭裁判所の『検認』という手続きを受けなければなりませんでした。この検認を受けるためにはすべての相続人を確定する必要があり、亡くなった人の戸籍を出生時にまで遡って確認するなど手間がかかり、作業が終わるまで2~3カ月が費やされることも珍しくありませんでした」

 実際にそうした作業に忙殺されたのは、一昨年の暮れに俳優の父・梅宮辰夫さんを亡くした娘のアンナさんである。といっても梅宮家の場合、そもそも遺言自体が残されておらず、

「相続の手続きは大変で、税理士や司法書士の指示を受けて60回以上も役所を訪れました」

 そう振り返るのだ。

「戸籍謄本にしても、生まれた時にまで遡って取り寄せる必要がありました。パパは満州の出身で、戦後の足跡なんて何も聞かされていませんでした。その作業を進めながら“まさか隠し子なんていないよね”とドキドキしていたのですが、結局、私はやっぱり一人っ子でした(笑)」

 たとえ遺言があったとしても、“たんす遺言”のままでは執行に至るまでに膨大な手間がかかる。また、もし検認の前に相続人が勝手に遺言書を開封すれば、5万円の過料が科されてしまう。対して、

「新しい保管制度を利用すれば検認の手続きが不要となり、遺言の執行を迅速に、かつスムーズに進めることが可能になります」(武内氏)

 保管手数料は1件につき3900円。保管の撤回や内容の変更は無料で、遺言者の死後50年間保管される。この制度はまた紛失や焼失、偽造などのリスクや、自宅に仕舞われていた遺言書が発見されずに終わるといった“悲劇”をなくす役割も果たすという。

「東日本大震災などの大災害では、多くの自筆証書遺言が失われたと推測されます。自筆のため原本しか存在せず、失われれば内容を確認する術はない。初めからなかったのと同じ扱いになってしまいますが、新たな制度では、法務局の遺言保管所において原本が保管されるとともに、重要情報は磁気ディスクなどで管理される。これらの情報は、もし大災害で特定の遺言保管所がダメージを受けても影響がないよう、別の場所でもバックアップが取られているのです」(同)

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