「綾瀬はるか」の刑事と「高橋一生」の殺人鬼が入れ替わる「天国と地獄」

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逮捕されれば刑務所確実

 実直で堅物、正義感の塊の刑事とサイコパスのシリアルキラーが、満月の夜に体が入れ替わってしまう。「階段落ちで入れ替わり」は昭和世代にとって懐かしさと既視感があるものの、予測不能な展開で釘付けにしているのが「天国と地獄~サイコな2人~」(日曜21時~、TBS)だ。

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 視聴率も動画再生回数も上々。

 シンプルな切り口だが、善と悪の入れ替わりで生じる「心理戦」が見もので、主演ふたりの力量に過剰な期待が寄せられている。

 バカがつくほどまじめで融通が利かず、正義の暴走をしがち。男社会の捜査一課でお荷物扱いされている刑事・望月彩子を演じるのは綾瀬はるか。

 パチンコ大手チェーンの社長が殺害された現場で、独特な洗剤のニオイに気づき、ある人物にたどりつく。

 それが高橋一生演じる日高陽斗だ。

 大企業創業者の御曹司で頭脳明晰なエリート、マサチューセッツ工科大学では分子生物学を専攻。

 自ら創薬ベンチャー企業を立ち上げ、成功した勝ち組人生を歩んでいる。この洗剤を製造しているのが日高の会社だった。

 地道に足を使って証拠を集め、確実に追い込めると踏んだ望月は、日高と対峙する。

 ところが、証拠隠滅を図る日高。取っ組み合ってもつれ合い、歩道橋の階段から転げ落ちるふたり。家宅捜索と任意同行の直前に、刑事と犯人の体が入れ替わってしまったのが初回。

 逮捕されれば殺人の罪で刑務所行きが確実、日高はまんまと望月の体で生きていくことになる。

 ひとまずふたりは協力し、容疑を晴らして無罪放免の方向へ動くというのが第2話だった。

 初回を観て、甘さとゆるさを抑えた綾瀬の立ち居振る舞いが、実に心地よかった。

ちゃんと救世主が

「義母と娘のブルース」(2018年、TBS)の宮本亜希子役よりは地に降りてきた雑味があり、アクションが要となる大河ファンタジー「精霊の守り人」(2016~2018年、NHK)のバルサ役や「奥様は、取り扱い注意」(2017年、日テレ)の伊佐山菜美役よりは気軽に見守れる軽妙さがある。

 一方、高橋一生はどうか。怜悧も狂気も仮面の笑顔もお手のものだ。

「モザイクジャパン」(2014年、WOWOW)の超キレキレなAVメーカー社長・九井良明役といい、昨年末の「岸辺露伴は動かない」(NHK)といい、タイプは違うが社会的には魅力的なサイコパスそのもの。

 映画「アメリカン・サイコ」のクリスチャン・ベールを超えるサイコパスになれるかしらん、と鼻息荒くしていた。

 いや、違うんだわ。このふたりが入れ替わっちゃうんだわ。

 つまり、綾瀬が演じるのは「サイコパスな高橋一生」で、一生が演じるのは「融通利かない綾瀬はるか」。

 つまり、適役と思って観始めたら、入れ替わっちゃって、ある種の「二人羽織状態」に。

 で、この二人羽織状態はどうか。声音をぐんと落として、無駄な抑揚を抑える綾瀬。ただ単に男を演じるのではなく、「サイコパスな男を演じる高橋一生」を見事に演じているではないか。

 逆に、一生のほうはやや女度を盛りすぎた感がある。そもそも望月彩子という刑事は女度と甘さはかなり控えめという設定。

 視聴者にわかりやすく「仕草の女装」をしたようだが、一生が演じる「堅物の綾瀬はるか」はちょっとカマトトすぎた。

 入れ替わった男の体に対しても、異様な拒否反応。潔癖か。男女入れ替わりの定番でコミカルな要素ではあるけれど、そこはもうちょっと冷静に賢くて図太い女にしてほしかった……。

 それはさておき。いや、これ、どう考えてもサイコパスの殺人鬼が有利だわ、と思っていたら、ちゃんと救世主が現れる。綾瀬とバディを組む後輩刑事“ゆとりハチマキ”こと八巻英雄だ。

 演じるのは「ベビーフェイスのお人よし」が長所の溝端淳平。整った童顔は脅されたり、巻き込まれたり、悪意に翻弄されるのにぴったりだ。

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