長瀬智也主演「俺の家の話」、笑わせて泣かせて、ホームドラマのいいとこどり

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 長瀬智也主演、宮藤官九郎脚本の「俺の家の話」がスタート。威厳ある人間国宝の父親が倒れ、介護することになった家族を描く令和のホームドラマの見どころとは。

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最後の主演作とは思いたくない

 親は老いる。それはもう誰でも平等に。何が寂しいといえば、「身の回りのことができなくなる」ことだ。

 特に「排泄や入浴が介助なしにできない」のは衝撃的だ。親子とはいえ、排泄や入浴はとてもプライベートな行為。介助される親も、介助する子も、さまざまな感情が交錯する。

「ひと言では到底片づけられない恩讐」とでもいおうか。親の介護を描くうえで、濁したりはずしたりしてはいけない描写を初回からしっかり盛り込んだ「俺の家の話」(金曜22時~、TBS)の話をしよう。

 主演は「ジャニーズ事務所を退所して裏方に回る」という話がまことしやかに言われている長瀬智也。

 最後の主演作とは思いたくないし、プロレスラー役で完璧な体に仕上げた渾身の役作りを見ると、しみじみつくづく「これで最後はもったいない」と思ってしまう。

 長瀬が演じる観山寿一は、17歳で実家を飛び出し、大手プロレス団体に入門。

 人気レスラー“ブリザード寿”となって、世界進出を果たすも防衛戦で負傷。新団体に拾われたものの、妻とは離婚し、息子の養育費とマンションのローン2000万を抱え、厳しい生活状況だ。

 その矢先、能楽の人間国宝である父・観山寿三郎(西田敏行)の危篤を知らされ、25年ぶりに家族と対峙。寿一は長男だが、この数年の父の健康状態をまったく知らなかった。

 プロレスラーを引退して、跡継ぎに名乗り出るも、なんと父は回復して退院。しかも介護ヘルパーの謎の女性・さくら(戸田恵梨香)と結婚を宣言。ちょっと困ったお家騒動に…という展開だ。

ホームドラマのいいとこどり

 初回はリアルタイムで視聴、声を出して笑いっぱなし。能楽の宗家に生まれた長男坊がプロレスに身を捧げた半生を振り返る。

 プロレスラーとしてはすごいんだかすごくないんだかよくわからない立ち位置が、まず笑える。

 ワイルドなプロレスラーの象徴ともいえる長い髪だが、断髪の途中でうっかりパッツン前髪になった長瀬の顔芸は、破壊力がすさまじすぎた。腹筋崩壊。

 その長瀬へのリスペクトをつのらせすぎて、逆に無礼を働く後輩レスラー(井之脇海)も相当おかしかった。

 主役を不自然なくらい素敵で無敵で完璧に見せる「主役接待」が横行する日本のドラマ界において、ここだけは真逆。かなり徹底して接待廃止の方向である。

 25年の年月を経て再会した家族たちとの、相性がいいんだか悪いんだかわからない距離感もちょうどいい。

 男所帯の稚拙さをバッサバサと斬り倒す妹・舞(江口のりこ)と、弁護士になった弟・踊介(永山絢斗)は相続の話を建設的に進めたい様子。

 骨肉の争いになってもおかしくないのだが、リズミカルな丁々発止は「憎み切れない間抜けさ」と「滲み出る人の好さ」として笑いを誘う。

「寺内貫太郎一家」からくんずほぐれつのドタバタを、「渡る世間は鬼ばかり」から粘着質で執拗なセリフ回しを差し引いて、適度な毒気と湿度を維持したような印象。ホームドラマのいいとこどり。

 また、父の一番弟子で芸養子になった寿限無役の桐谷健太は、いわばバランサーだ。遅い反抗期がやってきた西田と、遺産相続を目論みつつも介護をしたくない子供たちの間に立ち、穏やかに事が進むよう立ち回る。桐谷は、勢いを削いで演じる穏やかな役のときに人の好さが出るね。

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