LINEは1日10分以内に! SNSが引き起こす深刻な「脳」への影響とは

国内 社会 2021年1月26日掲載

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「外出自粛」で増えるスマホの使用時間

 緊急事態宣言の効力は前回ほどではないとはいえ、それでもまた「ステイホーム」「リモートワーク」の人が平時と比べて増えるのは間違いない。新型コロナの感染拡大を防ぐためには外出自粛も仕方がないと理解を示す国民は多い。

 が、一方で家にこもることの弊害も忘れてはなるまい。運動不足が与える影響は馬鹿にならない。

 また、PCやスマホに接する時間が増えることによる精神面への悪影響にも気を配る必要があるだろう。

 昨年11月に発売され、日本でもベストセラーとなっているスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏の著書『スマホ脳』には、スマホに代表されるデジタル機器、及びそこで提供されるSNSサービスの「副作用」について最新の研究成果が報告されている。

 以下、睡眠不足とうつを招きかねないリスクについて、同書をもとに説明してみよう。

私たちの祖先にとって“ブルーライト”とは

 まず指摘されているのは、ブルーライトの影響。ブルーライトとはパソコンやスマホのディスプレイに多く含まれる青色光のことである。

 問題は、ブルーライトには睡眠に関係したホルモン、メラトニンの分泌を抑える特殊な効果があるということだ。メラトニンとは、眠りにつく時間を身体に知らせる働きをするホルモンである。日中は分泌量が少なく、夕方になると増え、夜に最多になる。夜にスムーズに眠るには、メラトニンが適切な時間帯に分泌される必要がある。

 ところが前述の通り、ブルーライトはその分泌を抑える効果を持つ。そのメカニズムを同書はこう解説している。

「人間の目の中にブルーライトにだけ強く反応する細胞が存在するが、私たちの祖先にとってブルーライトは晴れ渡った空から降ってくるものだったからだ。

 この細胞が脳に『メラトニンを作るのをやめろ』と告げる。『さあ起きろ、油断せず警戒を怠るな!』と。私たちの祖先にとってブルーライトは昼間活発に行動するためのものだったから、あなたや私もブルーライトで元気になってしまうのだ」

 起きている間に使うんだから元気になっても構わないのでは? そんな認識は甘いという。

「眠りにつく前にスマホやタブレット端末を使うと、ブルーライトが脳を目覚めさせ、メラトニンの分泌を抑えるだけでなく、分泌を2~3時間遅らせる。つまりブルーライトがあなたの体内時計を2~3時間巻き戻すのだ」(『スマホ脳』より)

 このため一種の時差ボケのような現象が起きてしまう。「脳が目覚める」というと悪いことではないようだが、実際にはそれによって睡眠障害を引き起こされてしまうのだ。

 これは決して机上の空論ではない。

「寝る前にスマホが手放せない人」ができる対処法

「600人近くの被験者を観察した研究がそれを証明している。スマホなどのスクリーンを見ている時間が長い人ほど、よく眠れなくなる。特に、夜遅くにスマホを使うと影響が大きかった。眠れなくなるだけでなく、眠りの質も落ちる。そして当然、翌日に疲れている可能性も高まる」(同)

 これ以外にも、スマホを寝室に置いた小学生と置かなかった小学生の比較実験がある。保護者の報告をもとにまとめると前者は後者よりも1時間睡眠時間が短かった。

 もちろんテレビも同種の影響を与えるのだが、スマホのほうがより影響が大きい。

「世界的に有名な病院が、スマホが脳のメラトニン合成に与える影響を徹底的に調べたことがあった。その病院はこう忠告する。どうしても寝室にスマホを持ち込みたいなら、寝る前には画面を暗くして、目から最低36センチは離して見る。そうすれば、メラトニン合成はそれほど妨げられない」(同)

 睡眠不足がうつをはじめとして心身に深刻な影響を与えることについては今さら説明の必要はないだろう。決して侮ってはならないのだ。スマホが手元にないと不安でかえって眠れない、という人でもこのくらいなら実行できるのではないか。

SNSをチェックすればするほど「自信がなくなる」

 精神科医の立場からハンセン氏が憂慮しているもう一つのポイントがSNSと気分の落ち込みとの関連だ。

「2千人近くのアメリカ人を調査したところ、SNSを熱心に利用している人たちのほうが孤独を感じていることがわかった。この人たちが実際に孤独かどうかは別問題だ。おわかりだろうが、孤独というのは、友達やチャット、着信の数で数値化できるものではない。体感するものだ。そしてまさに、彼らは孤独を体感しているようなのだ」(同)

 なぜそのようなことになるのか。ハンセン氏はSNSを用いることで、他人と自身とを比較する機会が増えることが影響しているのではないか、と見ている。SNSによって、どうしても自分よりも賢い人、成功している人の情報を目にしてしまう(実際に賢いか、成功しているかはともかく)。

 それも有名人に限らず、身近な「リア充(リアルが充実した人)」が常に目に入る。さほどSNSに没頭していない人にはピンとこないかもしれない。

 しかし、これもまたいくつもの調査結果が報告されている。

「10代を含む若者1500人を対象にした調査では、7割が『インスタグラムのせいで自分の容姿に対するイメージが悪くなった』と感じている。20代が対象の別の調査では、半数近くが『SNSのせいで自分は魅力的ではないと感じるようになった』と答えている。同じことが10代にも当てはまる。あるアンケートでは、12~16歳の回答者の半数近くが『SNSを利用したあと、自分の容姿に不満を感じる』という。男子に比べ、女子の方がさらに自信が揺らぐようだ」(同)

 もちろんSNSにはマイナス面ばかりあるわけではない。SNSは上手に使えば、多くの人と社交を楽しむことができるし、むしろ孤独を紛らすのに貢献するだろう。ハンセン氏もSNSで元気になる人が存在することも否定していない。

 問題は、自分がどちらなのか、あるいは家族がどちらなのかは簡単にはわからない点だろう。また、自身の置かれた状況によって、その影響は変化しうる。

 わかった時には深刻な精神状態になっていた、という最悪のケースもありえるのだ。

 ここでも解決策はシンプルだ。時間を制限するのである。米国では、軽いうつ状態の人のSNS利用時間を1日30分以内(1サービスあたり10分以内)と制限してみたところ、3週間後には精神状態の改善が見られたという報告もあるという。

 感染リスクを下げるために家にこもるにしても、その分だけPCやスマホと接する時間を安易に増やしてしまうと、別のリスクもあることは肝に銘じたほうが良さそうだ。

デイリー新潮編集部