中韓で「キムチ戦争」勃発、当局をバックに攻勢の中国に、敗色濃厚の韓国が取った「禁じ手」

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コロナ死者が少ないのは

 剣道、空手、桜、うどん……。あらゆるものを韓国起源の「ウリジナル」(ウリ=我々とオリジナルをかけた言葉)だと主張してきた韓国。最近になって、中国との間でキムチの起源を巡る論争が起きている。当局をバックに攻勢を強める中国に対し、韓国が繰り出した禁じ手とは?

 韓国の2020年度のキムチ輸出額は、過去最高の1440億ウォン(1ウォン=0.094円)を記録した。

 輸出先1位は49.9%を占める日本である。

 2000年頃までは輸出量の90%を日本が占めていたが、今ではアメリカ、香港、台湾、オーストラリアなど、さまざまな国に広がっている。

 日本ではかつて朝鮮漬けと呼ばれ、80年代半ばからキムチと呼ばれるようになったが、ニンニク臭ゆえに敬遠されがちだった。

 韓流ブームが広がると大型スーパーにキムチコーナーが設置されるなど、一般家庭の食卓にも上がるようになった。

 同時に韓国料理の認知度も上がった。

 93年に東京・四谷に小さな韓国食料品店を開いた妻家房は、デパ地下のキムチコーナーへの出店を経て、95年にレストラン1号店をオープン。

 その後、韓流ブームに乗って、ショッピングセンターのレストラン街などに次々と出店し、一躍有名になった。

 現在、食料品店とレストランを合わせて20店舗以上を運営している。

 一方、2018年の平昌オリンピックとK-POP人気をきっかけに、欧米でも韓国文化が注目されるようになった。

 イギリスのBBCが発酵食品であるキムチを特集し、昨年、フランスの研究者が「韓国におけるコロナ死者が少ないのはキムチを食べているから」という内容の論文を発表した。

 2003年にSARSが大流行したときも死者を出さなかったことから、このコロナ禍でも、キムチを食べていれば健康に生きていけると信じている年配の韓国人は多い。

1400万の登録者数を持つ中国人ユーチューバー

 韓国のキムチの輸出量は6万トンほどだが、その一方で、30万トンを中国から輸入している。

 中国産キムチは家庭用ではなく、多くが外食産業などの業務用である。

 韓国は野菜の値段が不安定で、外食産業を中心に低価格かつ安定的に供給される中国産キムチの消費量が増えている。

 中国産キムチの輸入は2000年頃から始まり、この20年でシェアが拡大した結果、原料となる韓国産白菜の栽培面積は半分になった。

 それでも「キムチの本家は韓国だ」と言い張ってきたが、1400万人の登録者数を持つ中国人ユーチューバーが、キムチは中国の伝統料理だと言い始めたのである。

 ある動画では、若い女性が丁寧かつ流麗に白菜キムチを漬けている。白菜を切って塩漬けにし、水洗いし、ヤンニョムと呼ばれる調味料と混ぜる。

 動画のタグには、「中国料理法、中国料理」などと書かれている。
 
 それを見た韓国人は当然のごとく怒り、コメント欄は炎上。そして、そのユーチューバーの正体に注目が集まった。

 そのユーチューバーは、「両親が他界して祖母と2人で中国の田舎に住んでいる」というのだが、ひとりで携帯電話を使って動画を作成しているとは思えないクオリティの高さである。

 いま、中国で海外のSNSを使うことはとても難しいが、彼女はユーチューブ、フェイスブック、ツイッターとあらゆるSNSを自由に使っており、中国共産党の機関紙ともいえる人民日報でも大きく取り上げられている。

 無垢な田舎娘を売りにするユーチューバーの背後に、中国当局の影が見え隠れするのだ。

 それはともかく、中国と韓国がキムチの起源は自国にあるとお互いに言い出した背景には、中国の「泡菜(パオツァイ)」がISO国際標準化機構から認証を受けたことがあるようだ。

 泡菜は、日本の漬物や西洋のピクルスに似たもので、生姜、ニンニクなどの香辛料と塩を入れた熱湯に様々な野菜を入れて発酵させた料理。

 主に四川地方で発達していることから「四川泡菜」とも呼ばれているが、キムチを「韓国泡菜」と呼ぶ中国人は少なくない。

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