アバター店員はなぜ重宝されるのか? システム開発会社社長が語る“未来予想図”

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アバター店員の接客力

 NHKのニュースサイト「NHK NEWS WEB」は11月5日、「『進藤みなみさん』にだったら下着の相談できるかも」との記事を配信した。ここで“主役”として取り上げられているのが「アバター店員」だ。

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 たとえ女性の販売員が相手でも、下着の相談を対面で行うのは恥ずかしい。こんな女性消費者の悩みを解決しようと、下着大手メーカーのワコールと、ベンチャー企業のHEROESが接客システムを開発した。

 東京都内にある「3D smart & try 東急プラザ表参道原宿店」で接客を担当するのはCGで描かれた女性の“ビューティーアドバイザー”だ。

 女性客と“ビューティーアドバイザー”の会話は極めてリアルだ。質問すれば、たちまち的確な回答が返ってくる。

 それもそのはず、この“アバター店員”は、パソコンの前に座っている本物の女性店員の表情や動作を読み取り、瞬時に再現しているからだ。

 店員が顧客と向かい合っているのは間違いない。しかし、生身の人間が接客するのではなく、CGで作られたアバターが“代行”しているのだ。

 一体、何のためにこんな“手間”をかけるのか、HEROESで代表取締役を務める高崎裕喜氏(49)に取材を依頼した。

「少なくとも現在の技術では、どんなに高性能な人工知能(AI)を開発したとしても、コンピューターが人間とセールストークを繰り広げることはできません。一方、アバターはCGで作成されていますから、生身の人間には言いにくいことでも気軽に話せる。なおかつアバターの会話は本物の人間が行いますから、AIではなし得ない、必要なムダ話も含めたリアルなコミュニケーションが可能です」

アバター店員に遭遇

「アバター」を『広辞苑 第七版』(岩波書店)で調べてみると、「インターネットのコミュニティなどで、利用者自身の表象として示す図像」と定義されている。

「私は『素顔を隠す』ことや、『別のキャラクターになりきる』ことがアバターの基本だと考えています。伊達メガネやマスク、プロレスラーの覆面、着ぐるみ……といったものもアバターの一種と考えていいのではないでしょうか」(同・高崎氏)

 アバター店員は、YouTuber人気が1つのきっかけとなり誕生した。「私もYouTuberになりたい」と憧れる層が増えていくにつれ、自分のルックスやスタイルなどのコンプレックスに直面する人が増えた。

「その頃、高性能のセンサーが安価で販売されるようになったこともあり、CGなどで作られたキャラクターの動きと、自分自身の動きをリンクさせることが可能になりました。いわゆる“VTuber”の誕生ですが、この技術がアバター店員に大きな影響を与えました」

 高崎氏は以前、大手広告代理店に勤めていた。辞めるまでの数年間は、自治体の持つ医療情報を一元化し、民間サービスなどと連携する「健康都市づくりプロジェクト」の陣頭指揮をとっていたのだが、実現には至らなかった。

「健康や医療のプラットフォームビジネスに関わりたいという想いは強かったので、退職して起業することにしました。ただ、何をするか明確に決まっていたわけではなかったんです。すると友人から『面白い仕組みの接客スタイルがある』と紹介してくれて、バーで接客するアバター店員と出遭ったのです」

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