アバター店員はなぜ重宝されるのか? システム開発会社社長が語る“未来予想図”

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限界集落でも活躍?

 AvaTalkは細部までこだわったという自負があるという。例えばアバターの顔と動きだ。

「マンガやCGキャラクターの場合、鼻を省略すると人気が出るケースもあります。鼻がないと、すっきりした印象を与える場合があり、子供も違和感を覚えません。しかし私たちは鼻を省略せず、顔と体の大きさも日本人の平均を再現しました。目や鼻、口の位置は美男美女の条件と言われる黄金分割に近い配置にしています。たとえCGでも、実際の人間を基本にデザインすることで、リアルなコミュニケーションが生まれると考えています」

 行政もAvaTalkに注目している。とある地方自治体は、限界集落に住む住民がアバターで会話するシステムを検討している。

「特に足腰が弱り、外出できなくなった方や人となかなか会う機会が少ないような高齢者が利用することを想定しています。見知らぬ高齢者が、お互いにアバターを使って新しい高齢者と会話するのです。限界集落なので、自宅を訪ねてくれる人もいない。古くからの親友なら電話をかけることもできますが、人間が必要とするコミュニケーションはそれだけではありません。顔だけは知っている人や、全くの他人と趣味や嗜好で話が弾むと、元気になるのは誰でも経験があると思います。それをアバターの技術で加速させようというわけです」

 具体的にシステムをどう構築するかは模索中だが、例えば囲碁や将棋が好きな「限界集落に住み、外出がままならない」老人同士を、アバターを使って地域を超えて出遭わせることも考えられる。

 生身の自分が映し出されるテレビ電話はハードルが高くても、アバターなら気軽にコミュニケーションができるのは若者も高齢者も同じだ。ペットロボットのAIBOを購入した高齢者は多かった。

井戸端会議の復活

 高崎氏は今のSNSの現状も、「テキストでのコミュニケーション、つまり文字での意思疎通に偏りすぎている」と考えている。

「井戸端会議という言葉があります。本来、人間は労働する時でも、休息する時でも、周囲の人と楽しく会話に興じていたはずなんです。それも、どちらかと言えば、どうでもいい、下らない話に花を咲かせていた」

 だが現在は孤独にスマホを操作し、表示された書き言葉を読むことでコミュニケーションが成立してしまっている。人と会話する必要性は乏しくなる一方だ。

「そこには井戸端会議のような会話は存在しません。SNSのコミュニケーションが書き言葉に偏っているからこそ、引きこもってしまう人や、生きづらさを感じる人が多いのではと思うこともあります」

 一方のアバターは、あくまでも本物の人間が操作している。もし下着の相談員や、メンタルヘルスの医師に対面で相談したいと思えば、会うことは可能だ。

「人は人と支え合うことでしか生きていけません。その際の中核は表情や話し言葉です。私たちの日常から世間話が失われつつあります。だからこそIT技術を活用し、もっと気軽に他人と会い、気楽に会話を楽しむことのできる空間が求められていると考えています」

週刊新潮WEB取材班

2021年1月5日掲載

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