木村佳乃、吉田羊、仲里依紗の成熟した大人の恋 「母たち」の金曜ドラマ
母3人による三者三様の不倫模様と聞いて、拒否感や嫌悪感を覚えた女性がいるかもしれない。
「不倫を美化するな!」と鬼の形相かもしれない。
男性は男性で「よくある、女に都合のいい不倫モノ」と敬遠したかもしれない。
このドラマはそんなきれいごとでもなければ、よくあるドロドロ愛憎劇というわけでもない。
夫婦関係の終わりと始まりをみっちりこってり描いた「新しい生活様式」の提案とも言えるのだから。
まずは登場人物を3組に分けて解説しよう。
木村佳乃と渋川清彦の夫婦。一人息子がいて幸せな生活を送っていたが、夫の渋川が会社の金を横領して、若い女と駆け落ち。その若い女(不敵な女がよく似合う瀧内公美)の夫が小泉孝太郎。
木村と小泉はともに「相方に逃げられた」怒りを抱え、共感から一夜を共にする。
その後、渋川の居所を突き止めた小泉は、木村と再会し、惹かれ合っていく。傷を癒し合うということで「チーム満身創痍」と呼ぼう。
お互い無事に離婚できたので、不倫ではない。
価値観の違いから喧嘩もしたが歩み寄って、ともに第二の人生を生きるべく結婚に至ったのが先週の回。
次の組は「チーム虎視眈々」と呼ぶ。
矢作と吉田の「チーム艱難辛苦」
辣腕弁護士・玉置玲央の妻である仲里依紗。人もうらやむセレブ生活だが、モラハラ&浮気三昧の夫と、その愛人・森田望智に苦しめられる。
しかも森田の意趣返しで、夫は仕事も名声も失う。
家庭崩壊に見えるが、里依紗には救世主がいた。
一目惚れ&直球で口説いてくる人気落語家の阿部サダヲである。
妻を侮蔑する夫、執拗な攻撃をしてくる愛人も、阿部の軽妙だが真摯なアドバイスで乗り切ることができた。
息子(宮世琉弥)の才能を認めてくれたのも、夫ではなく阿部だった。
先週、阿部のプロポーズを受けた里依紗。落魄れて弱った玉置をすぐには捨てない。
夫が立ち直ったら離婚して、阿部の懐に飛び込もうと心に決める。
最後は、作家の夫とキャリアウーマンで大黒柱の妻の組み合わせ。
矢作兼と吉田羊の夫妻はその苦しみから「チーム艱難辛苦」と呼ぶ。
羊は大手食品メーカーに勤め、多忙な日々。仕事優先で家庭のことは夫に任せっぱなし。
一人息子(奥平大兼)は頭脳明晰だが引きこもりで、うまくコミュニケーションがとれずにいる。
奥平が男性を好きなことも知らない。
若くて優秀な部下・磯村勇斗からジワジワとアプローチされ、性欲を抑えきれず、ついには関係をもってしまう羊。
夫に浮気がバレ、しかも初犯ではないことも判明。
夫と息子は家を出て、夫の故郷である与論島に移住。磯村からも身を引き、羊は仕事に邁進。本社から営業所へ赴任し、ひとり奮闘する。
タイトルどおり、恋をする母たちに焦点を当てるならば、女の性欲を隠したり、蔑ろにしたりせず、しっかり向き合っている点がとても好ましい。
特に、佳乃が自らの経験を語るシーンでは、性欲の解釈が秀逸だった。
性欲は「普段は顔を出さないけど、ちょっとしたきっかけで顔を出してきて暴れ出す厄介な」モノであり、「怒りや恐怖の延長線上にもある」という。
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