赤楚衛二、町田啓太 「BLドラマ」が「深夜枠」から飛び出すキッカケとなるか

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「人の心が読めたら、ちょっと素敵」と思わせるドラマ

 世間では「チェリまほ」と親しまれている人気のBL漫画を原作とするテレ東の「木ドラ25」の「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」。

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 人の心の声が読めるようになったら、地獄だなと思っていた。もちろん、読まれるほうも地獄である。そう思わされてきた経緯がある。

 古くは『家族八景』『七瀬ふたたび』を書いた作家・筒井康隆のせいだ。人の心を読むことができる七瀬という女性が、どす黒い欲望や悪意に直面し、特殊能力をもつ悲劇を描いたSF小説である。

 思春期の頃に読んだ記憶があるので、かなり昔の作品だ。数多くドラマ化されてきたのだが、2012年・TBS系で放送した木南晴夏主演・堤幸彦演出バージョンがとても斬新だった。

 また、『サトラレ』を描いた漫画家・佐藤マコトのせいでもある。心の声がダダ漏れなのに本人だけは気づかない、「サトラレ」という特殊な病にかかった人の恥辱の地獄をコミカルに描いた漫画だ。

 これも映像化され、ドラマではサトラレの男性・里見をオダギリジョーが演じた(2002年・テレ朝系)。

 そういえば、「SPEC」(2010年・TBS)でも真野恵里菜がサトリというテレパスのキャラクターを演じ、アナザーストーリー「サトリの恋」まで展開していたのが記憶に新しい。

 これらを観てきた者としては、「人の心が読めたらいいのに」という憧れよりも「人の心が読めるという悲劇」のほうが根強い。なぜなら人の心はたいてい冗舌で毒舌、悪意に満ちているから。昭和から平成までエンタメの名作によってそう思いこんできた(ま、だから面白いのだけれど)。

 ところが、ここにきて異変が。「人の心が読めたら、ちょっと素敵やん?」と思わせるドラマが登場。

「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(テレビ東京系)である。

熟女たちが熱狂的な視線を送るイケメン町田啓太

 豊田悠の漫画が原作で、世間では「チェリまほ」と親しまれている人気のBL漫画だそう。

 テレパスと呼ばずに魔法使いと呼び、童貞をチェリーという言葉に変換する。可愛らしくなるよね。うまいよね。今の時代に合うよね。

 主演は赤楚衛二。三浦友和の息子に似た、もっさり感と昭和感のある俳優だと思っていたが、主演ともなると顔が変わるんだな。

 表情が柔らかくなって、とてもいい顔になった。その赤楚が演じるのは、30歳・童貞。誕生日を迎えた途端、人に触れると心が読めるようになっちゃったという役である。

 童貞の焦りというよりは、うだつのあがらない、誰からも必要とされない自分に対して、あきらめの境地に至っている男性・安達清。

 ふがいない自分に毎日落胆し、毎日自己否定の連続。会社の同期で、仕事もデキる人気者のイケメン・黒沢優一の活躍をまぶしそうに眺める日々。

 ところが、黒沢に触れた瞬間、自分に好意を持っていると気づく。え? 非の打ちどころのないエリートイケメンの黒沢が自分に恋をしている…?!

 人生最大級の困惑。どんどん伝わってくる恋心と優しさ。さえない自分の長所を認めて、理解してくれている黒沢の思いが嬉しい。戸惑いはやがて好意へと変わり、安達の自己肯定にもつながっていく……そんな物語である。

 で、このエリートイケメンを演じるのが町田啓太。熟女たちが熱狂的な視線を送るイケメン俳優だ。

 仲間由紀恵主演「美女と男子」(2015年・NHK)では敏腕女性マネージャーによってスターダムにのしあがっていく新人俳優の役を演じた。

 また、南果歩主演「定年女子」(2017年・NHK BSプレミアム)では、バツイチ53歳で再就職に奮闘する南に恋心を寄せるイケメン役を演じた。

 熟年キャリアウーマンにとって理想の男性像、という役が多かった。

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