業種別申告漏れ金額、「風俗業」が平均3373万円でトップ 彼女たちが納税しない事情

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 新型コロナウイルス対策の持続化給付金で、性風俗店は支給の対象外となっている。「社会通念上、国民の理解が得られにくい」というのがその理由だ。一方、“店で働く個人事業主”は支給の対象ではあるものの、「そもそも風俗嬢はきちんと納税しているのか?」と疑問の声もある。性産業に従事する女性たちを取材してきた作家の酒井あゆみ氏が、彼女たちの納税事情を取材した。

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 この時期になると、国税庁は「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種」というデータを公表する。11月末に発表された最新の「令和元事務年度」の順位では「風俗業」が1位だった。

 具体的な件数は公表されていないものの、「1件当たりの申告漏れ所得金額」、つまり申告漏れの平均額は3373万円。追徴税額の平均は1053万円だ。ちなみに業種別の2位は「経営コンサルタント」で、申告漏れ額は3321万円。3位は「キャバクラ」で2873万円。ここにキャバクラ嬢やホステスも含まれるようだ。

「風俗業」はこのランキングの常連である。昨年も1位だった。過去5年分の順位を紹介すると、2位(平成26事務年度)、2位(平成27)、1位(平成28)、2位(平成29)、1位(平成30年)となる。今回発表された令和元年を除けば、「キャバクラ(※平成28年度まではキャバレー扱い)」と1、2位を争う関係にある。

 ともすれば職業差別につながりかねないランキングだが、国税庁は「訂正申告を喚起する目的で、業種名と平均額を公表しています」(個人課税課)と意図を説明する。風俗業に関しては、

「個人の申告漏れを明らかにしたものですから、経営者とキャスト(従業員)の両方が含まれます。お店から給与をもらっているキャストは含まれませんが、多くの場合は個人事業主になられている方が多いのではないでしょうか」(同)

 風俗店の従業員の多くは個人事業主である、というのはどういうことか。簡単に説明すると、日本では「売春禁止法」で管理売春や斡旋などが禁じられている。売春する当人は罰せられないが、店は事業として売春を“させる”ことはできないのだ。お店が建前上、客と女性の「自由恋愛の場」とされ、店に払う“入浴料”と女性に渡す“サービス料”が別になっているのは、そういう事情である。だから風俗店で働く従業員は、個人事業主という扱いになるのだ。

アンケートから見えてくるコロナ禍での苦境

 個々の案件について国税庁は明かさないものの、公表されたランキングからは「適切な納税をしない風俗嬢は少なくない」という実状が見えてくるだろう。それは、私の経験からもいえる。

 今年の上半期、次の著作の取材のため、計6名の風俗嬢に「コロナの影響」について聞くアンケートを行った。一部を紹介すると、

〈昼の仕事に就こうと求人を漁っているが、ずっと夜職一筋だったから社会復帰をきちんと出来るかも分からなくて怖い〉(27歳)

〈客足が減って激安イベントが増えた〉(40歳)

〈高熱の客は拒否可能な店に移籍しました。良い客がほとんど来なくなって、足元見てくるような遊び方知らない客が目立つようになりました〉(42歳)

〈来店数は激減しました。自分の内面的な話では、来店数激減→接客数の減少→モチベーションの低下→長期休暇となりました〉(35歳)

 と、みな、仕事への不安を口にしていた。そんな苦しい状況にもかかわらず、私の「持続化給付金はもらいましたか?」という問いには、誰も「もらった」と答えないのだ。理由は給付条件である確定申告をしていないから、である。

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