業種別申告漏れ金額、「風俗業」が平均3373万円でトップ 彼女たちが納税しない事情

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なぜ申告しないのか

 なぜ確定申告をしないのか。ひとつには単純な知識不足というのがあるだろう。私も元風俗嬢だが、当時、自分が個人事業主で、納税の義務があるというのは知らなかった。店から何か言われた記憶もない。自分の周りに、確定申告をしている同業者もいなかった。

 店が、あえて女性たちに周知させないという場合も少なくないだろう。風俗業という仕事上、表立って看板を掲げていない店はままある。いわゆる闇営業というやつである。そんな店では当然、きちんと売り上げを税務署に報告していないわけだが、そこで働いている女性たちが確定申告をしてしまえば、そこから足がつく恐れがある。店からすれば「やめてくれ」という話なのだ。

 だが、確定申告をしない最大の理由は「身バレ」だろう。風俗一本という女性ならまだしも、昼の仕事とかけもちをしている女性の場合、不自然な収入は他人に知られたくない。副業をしているサラリーマンがやるような、会社にバレない申告の方法というのもあるにはあるようだが、万々が一、風俗勤めがバレた時はピンチに陥る。であればいっそ申告をしない、ということになるのだろう。また、夫に内緒で風俗で働いている場合もある。きちんと申告すれば、扶養から外れてしまうことにもなる。

 かつて、税理士とSMクラブの女王様を掛け持ちしている子に話を聞いたことがある(拙著『眠らない女―昼はふつうの社会人、夜になると風俗嬢』に収録)。一般人よりはるかに税の知識がある彼女も、万が一の身バレを恐れ、風俗での稼ぎは申告していないと言っていたくらいだ。私の体感では、風俗で働く9割の女性は申告をしていないのではないかと思う。

 実は今回アンケートに答えてくれた中で、ひとりだけ確定申告をしているという珍しい女性がいた。35歳のヘルス嬢だ。だがやはり、彼女も持続化給付金は申請しないそうだ。回答の一部を紹介すると、

〈確定申告をし始めたのは4年前の売上からです。(今年の売上が4回目の確定申告にあたります)。もし持続化給付金を受け取ることで税務調査が入って、過去の未納分を払わなくてはいけなくなったらどうしよう?という不安から(※申請はしない)です。あとは同じく税務調査が入ることで、周りに仕事のことがバレるんじゃないかと不安なのもありますね〉

酒井あゆみ(さかい・あゆみ)
福島県生まれ。上京後、18歳で夜の世界に入り、様々な業種を経験。23歳で引退し、作家に。主な著作に『売る男、買う女』『東電OL禁断の25時』など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月9日掲載

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