“緊縛”イベントへのクレームに謝罪 京大「自由の学風」に危機

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 かの京都大学に「自由の学風」を根付かせたのは、京大の前身である旧制第三高等学校の初代校長を務めた折田彦市であったと言われている。以来、100年以上にわたって、この学風は引き継がれてきた。

 そんな誇るべき伝統を揺るがす事態が起きたのは、11月5日のこと。10月24日に同大主催で開かれた、とあるシンポジウムにケチがついたのがきっかけだった。

 地元紙記者によれば、

「問題になったのは、“緊縛”をテーマに開かれたシンポジウムです。企画したのは京大大学院文学研究科で哲学を教える教授でした」

 このシンポジウム、現代アートとして新展開を見せる“緊縛”に、哲学や美学の観点からアプローチするという至極真面目な内容だったのだが、

「途中で、プロの緊縛師がモデルの女性を縛り上げる実演が行われたのです。すると“これは学問か”というクレームが1件入り、大学側が謝罪。ネット上で行っていたシンポジウムの動画公開を中止する事態となったのです」

 たった1件のクレームに動画まで非公開にするとは、あまりに過剰な反応。

 ところが、

「最近の京大は、どんどん規制が厳しくなり、自由は失われる一方です」

 と、同大関係者。

「京大といえば、キャンパス周囲の石垣にびっしりと立てかけられた立て看板が名物だった。ところが、2018年、大学が市の景観条例に乗じて、この“タテカン”を大幅に規制。以来、大学側が撤去しては、新たなタテカンが設置されるというイタチごっこが続いています」

 このような現状について、京大理学部出身で動物行動学研究家の竹内久美子氏も、

「京大には昔から“型にはまるな”“東大のやらないことを敢えてやれ”という暗黙の掟があり、教師も学生も、知恵を絞って突拍子もない研究を行ってきました。だから“東京の大学では好きな研究ができない”と京大に移ってきた研究者もたくさんいたんです。今回の件は、そんな京大の魅力が損なわれたようで、とても残念です」

 ネット上での批判や炎上を恐れ、安易に謝罪する昨今の風潮に、京大までもが迎合した形。自らを縛りつけ、右に倣(なら)えで“自由”を差し出そうとは、京大もよほどマゾなのか。

週刊新潮 2020年12月3日号掲載

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