藤井聡太、最年少200勝も三冠は当面お預け、史上最年少記録の最難関は?

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誰が相手でも同じ?

 2018年2月に東京・有楽町ホールで「朝日杯将棋オープン」を取材した。準決勝の相手は国民栄誉賞を受賞したばかりの羽生。藤井は非公式戦では羽生に勝っていたが公式戦はこれが最初。殺到する報道陣の中で、撮影兼任の筆者も至近距離からレンズを向けた(囲碁や将棋の取材では双方の初手まで撮影が許される)。ところが「それでは始めてください」と言われた先手番の藤井は悠々とペットボトル飲料を飲み出したため、「先手は羽生だったか」と慌ててレンズを羽生に向けかけた。注目される棋戦は撮影対応で着座から「始め」まで少し時間がある。その間に飲めばいいはずだが、相手がどんな大物でも「自分流」を崩さないのが藤井聡太の強さだと感じた。

 今年7月に藤井が大阪で渡辺から棋聖位を奪った際の記者会見(新型コロナの感染防止で別室からパソコンを使う「リモート質問」)で、筆者は「藤井七段は相手が羽生(善治)永世七冠だろうが、渡辺三冠だろうが、格下だろうがコンピューターだろうが、関係なく盤面に集中するだけの印象ですが、誰が相手でも全く同じでしょうか?」と尋ねた。

 藤井は「盤上を通じての人とのコミュニケーションでありますし…相手が指してきた手を見てこんな手があるのかなと思ったり…対局者によってはそれぞれいろんな発見があるのかなと思います」と答えた。

 大棋士を前に委縮しないのか? と精神面を知りたかったが質問が悪かったか、戦略的な内容の回答だった。コロナ対策でますます取材が制限されて苦慮しているがいつの日か、若武者に再度、質問ができる時を楽しみにしている。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」「警察の犯罪」「検察に、殺される」「ルポ 原発難民」など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月3日掲載

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