「巨人」2年連続で惨敗…頂上決戦には思えない「日本シリーズ」を抜本的に変える方法

スポーツ 野球 2020年11月28日掲載

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 昨年に続いて、ソフトバンクが4連勝で巨人を破ってあっさりと幕を閉じた今年の日本シリーズ。巨人ファンが盛り上がった場面はごくわずかで、盛り上がりに欠けたと言わざるを得ない内容だった。これで通算成績は36勝35敗と、パ・リーグが1つ勝ち越すこととなったが、これは第1回日本シリーズで毎日が松竹を破って以来のこと。過去10年を振り返ってみると、セ・リーグのチームが日本一になったのは2012年の巨人だけ。1試合ごとの勝敗で見てもパ・リーグが38勝、セ・リーグが17勝と大差がついており、過去7年間は最終の第7戦までもつれこんだケースすらない。

 セ・リーグとパ・リーグの実力差が明らかになっているのは、日本シリーズだけではない。2005年から始まったセ・パ交流戦でセ・リーグ勝ち越したのは2009年の1度だけであり、通算成績はパ・リーグが1098勝、セ・リーグが966勝と大差がついている。

 球団別に見ると、パ・リーグでは唯一、楽天が負け越しているが、交流戦開始当初は球団が創設されて間もない時期で戦力が揃っていなかった影響が大きい。過去5年間に絞ると、このうち楽天は4度も勝ち越しを果たしている。一方のセ・リーグはトータルで勝ち越しているのは巨人のみ。その巨人もさえ、2015年以降は負け越しているシーズンが多くなっている。

 こうした数字を比較しても、セ・リーグがパ・リーグよりも格下であるということは疑いようのない事実である。それを隠そうとしてか、開始当初は1チームあたり36試合だったセ・パ交流戦を2007年から24試合、2015年から18試合と徐々に減少させているが、セ・リーグにとっては強いチームと対戦する機会が減り、逆にレベル差が開く結果となってしまった。2004年の球界再編騒動からリーグとしての価値を高めてきたパ・リーグに対して、いつまでも巨人、阪神といった伝統球団の人気の上にあぐらをかいてきたセ・リーグの差が現在の状況を生んだといえる。

 前置きが少し長くなったが、今の方式では日本シリーズがプロ野球の頂点を決める戦いに相応しくないことは、誰の目に見ても明らかである。ひいきの球団が巨人にも勝てると感じたパ・リーグ球団のファンは多かったはずだ。このままでは、日本シリーズの存在意義が問われかねない事態となる。そうならないためにも、今一度ポストシーズンのやり方を再考すべき時期にきているのではないか。

 最もシンプルで分かりやすいのが、クライマックスシリーズのファーストステージの勝者が対戦するチームをリーグで入れ替えるというやり方である。例えば、昨年であればセ・リーグのファーストステージを勝ち抜いた阪神がパ・リーグ1位の西武と、パ・リーグのファーストステージを勝ち抜いたソフトバンクがセ・リーグ1位の巨人と戦い、それぞれの勝者が日本一を争う形式だ。そうすれば、少なくとも今年の日本シリーズよりも均衡した戦いが見られる可能性は高くなるはずだ。

 ただ、このやり方を導入すれば、ここ数年の流れからすると毎年「パ・リーグ同士の日本シリーズ」となり、ポストシーズンの意味合いそのものが問われることにもなりかねない。そうなると、やはり「リーグ再編」という抜本的な改革に踏み切る必要性が出てくるのではないか。

 最も望ましいのは、現行の12球団ではなく、球団数の拡張による再編だ。4球団増やして合計16球団とし、「4球団×4リーグ」で優勝を争い、その優勝チームによってプレーオフを争う形とするのだ。球団数を増やす話をすると、必ず出てくるのが、運営会社および本拠地の問題と、プレーのレベルが下がるという懸念である。

 しかし、前者については、一昨年ZOZOTOWNの創業者である前沢友作氏が将来的には球団を持ちたいと表明しており、水面下では他にも興味を示している企業は少なくない。加盟料を減額して、参入障壁を下げれば、さらに手を上げる企業が増えることが考えられる。球場についても新潟、静岡、愛媛、宮崎など地方でも立派な球場は多い。また、プレーのレベルについては一時的にわずかに下がる可能性はあるとはいえ、現在、社会人選手や独立リーグの選手の中には、NPBの一軍と変わらないレベルの選手も確かに存在している。NPB側が受け入れさえすれば、まだまだ才能が花開く選手も少なくないだろう。

 ソフトバンク、パ・リーグの強さが際立つことで色々な意見が出ているが、逆に言えば、プロ野球界を拡大するチャンスでもある。この2年間の巨人、セ・リーグの惨敗がDH制や交流戦、ポストシーズンの方式といった小さなルール変更だけではなく、プロ野球全体の構造を変えるきっかけとなることを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班