トランプ“大逆転”はあり得るのか 来るべき法廷闘争のシナリオを解説

国際 週刊新潮 2020年11月19日号掲載

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 アメリカ大統領選が世界中に知らしめたのは“赤と青”の2色によって、文字通り、真っ二つに分断された超大国の姿だった。

“当選確実”が報じられた民主党候補のジョー・バイデン氏(77)は、現地時間の11月7日夜、「分断ではなく、団結を目指す大統領になる」と“青”いネクタイ姿で高らかに勝利宣言を行った。しかし、“赤”をトレードマークとするドナルド・トランプ氏(74)は、いまだ自らの敗北を認めていない。

 だが、軋轢を煽ることで圧倒的な人気を誇ってきたトランプ氏の命運が、いまや風前の灯火なのは事実。

 とはいえ、4年前と同様に下馬評を覆す選挙戦を展開し、7千万票もの支持を獲得した現大統領に“再選”の望みが皆無かと問われれば、答えは“NO”である。大ドンデン返しのシナリオは残されている。

 アメリカ政治に詳しい成蹊大学の西山隆行教授が、今後のスケジュールについて解説するには、

「まず12月8日までに全米各州で選挙人を確定。続いて、14日に選挙人による投票が行われ、来年1月6日に開票されます」

 そこで選出された候補者が、晴れて“第46代アメリカ合衆国大統領”として、1月20日の就任式に臨むこととなる。

 だが、選挙人を確定するための州ごとの選挙は混迷を極め、大接戦を繰り広げたジョージア州やノースカロライナ州では、3日の投票日から1週間が過ぎた11月10日時点でも勝敗が決していなかった。

 現地特派員によれば、

「ジョージア州ではバイデン優位ながらトランプとの得票差はわずか0・2%。双方が約245万票を獲得したものの、その差は1600票ほどしかないと報じられました。州法では得票差が0・5%以下の場合、再集計の申し立てを認めており、州務長官も再集計する方針を示唆しています。他の激戦州を見渡しても、“バイデン勝利”とされたペンシルベニアやアリゾナは得票差が1%以下で、再集計となる可能性を否定できません」

最高裁への布石

 すでにトランプ陣営は再集計に加え、郵便投票の有効性や不正投票を巡って提訴を乱発している。

 大統領選に絡む法廷闘争で有名なのは、2000年のジョージ・W・ブッシュ氏とアル・ゴア氏のケース。

「ゴア側は接戦となった最後のフロリダ州で手作業による再集計を求め、州の最高裁もこれを認めました。ただ、ブッシュ陣営は差し止めを求めて連邦最高裁に上告。判事9人のうち、共和党寄りの保守派5人が“再集計は適切でない”と判断しました。まもなく、ゴアが“国民の結束と民主主義のために敗北を認める”と表明したことでノーサイドとなり、ブッシュ政権が誕生したわけです」(同)

 トランプ陣営は、この時と同じく、勝敗の行方が連邦最高裁の手に委ねられることを見越して“布石”を打っていた。リベラル派判事の死去を受けて、トランプ氏が保守派のエイミー・バレット氏を最高裁判事に指名。民主党の反対を押し切り、大統領選直前の先月26日に彼女を正式に就任させた。これにより、

「最高裁判事は保守派6人、リベラル派3人となりました。現在の保守派判事には、テーマによってリベラル派に同調する人物がいますが、バレットの就任で、保守派は確実に過半数を確保できる計算です」(同)

 連邦最高裁が2000年と同じくタイムリミットまでに再集計の見送りを言い渡すのか、否か。仮にトランプ陣営の主張を認めれば、訴訟や再集計作業によって混乱が長引き、12月8日までに選挙人が確定できない状況も起こりうる。その際に注目されるのが“合衆国憲法修正第12条”の存在だ。

 先の西山氏が続ける。

「1月6日の時点で、いずれの候補も過半数の選挙人を獲得できなかった場合、合衆国憲法では、下院が大統領を選出すると定めています。しかも、この選出方法では50州に1票ずつ割り当てる。つまり、下院議員は選出された州ごとに投票する候補を1人選ぶわけです。下院全体の議員数は民主党の方が多いものの、現地の報道を見る限り、州単位では共和党優勢が26州にのぼります。可能性は低いと思いますが、下院で選出することになればトランプ大統領が有利になります」

 下院での選出までこじれたのは過去2回だけで、直近でも1824年の大統領選まで遡る。それから2世紀ぶりの歴史的大混戦――。

 大逆転の結末を迎えれば、トランプ劇場の面目躍如といったところだが……。

特集「『トランプ大逆転』がまだある最終シナリオ」より