残念すぎるパナマ戦 風間八宏氏の指摘に集約される格下相手に苦戦の理由

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止まる重要性

 風間氏とまったく同じことを、後半から出場して試合の流れを日本に引き寄せたボランチの遠藤航(27)[シュツットガルト]が試合後に言っていた。

「僕はどっちかというと相手がどういうふうにプレッシャーをかけてきているのか特に注意しています。相手の立ち位置を見ながら自分のポジションを変えているし、最近は意識しています。相手の位置、自分の位置、味方の位置。そこを常に把握しておくのが大事だと思う」

 いまからもう11年前になる。当時は筑波大学の監督を務めていた風間氏を取材した。そのときに同氏が強調したのが、

「欧州や南米の選手は敵を見て狙いを察し、自分のプレーを変えている」のに対し、「日本の選手は敵ではなく、空いたスペースと味方を見て攻撃を組み立てようとする傾向が強い。一番重要な敵の存在が欠落していると感じる」(拙著『サッカー戦術ルネッサンス』[アスペクト]より抜粋)

ということだった。

 遠藤は精力的に動き回ったわけでも、敵を何人も引きつけたわけでもない。シンプルにDFラインやサイドからボールを引き出し、簡単にさばくことで攻撃の流れを引き寄せた。

 サッカーでは、時には「止まっていること」が重要な意味を持つこともある。味方がパスを出しやすくなったり、敵を引きつけることで味方にスペースを作ったりするからだ。

鎌田大地の活躍

 この試合におけるマン・オブ・ザ・マッチは、遠藤で異論はないだろう。個人的にパナマ戦は、フリーでいながらショートパスを敵に渡すなど、いつになくミスの目立った柴崎岳(28)[CDレガネス]から、攻守のキーマンは遠藤へと切り替わるターニングポイントになる試合かもしれないと密かに思っている。

 そしてもう1人、認識を改めたのが鎌田大地(24)[フランクフルト]だった。交代で入ると立て続けにワンタッチのパスで決定機を演出した。

 驚かされたのは戦術眼だけではない。見た目にもフカフカで、軟弱そうなグラウンドなのに、まったく苦にしないボディーバランスからいとも簡単にマーカーを抜き去ったプレーには驚かされた。

 元々器用な選手で、10月のコートジボワール戦ではストライカー的なプレーが多かったが、浅野拓磨(26)[パルチザン・ベオグラード]ら前線との組み合わせからパサーに徹するなど引き出しの多さを披露。そのレベルが、パナマ戦は半端ではなかった。18日(現地時間17日)のメキシコ戦では、遠藤ともどもスタメンで見たい選手だ。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月17日掲載

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