「ゲーム漬け」「スマホ依存」の我が子とどう向き合うべきか 成功体験を持つ親に聞いてみると

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いじめには「証拠の保全」

(2)「会話の糸口」を見つけてコミュニケーション

 オンラインゲームや動画視聴に熱中する子どもに悩む親は多い。口論などの“親子バトル”も珍しくないが、スマホを没収するような強硬手段は逆効果になりがちだ。そもそも子どもはなぜスマホを使いすぎるのか、そんな視点でコミュニケーションの糸口を探ってほしい。

 たとえばオンラインゲームについて注意したいなら、ひとまず子どもが遊んでいるゲーム名を聞き出す。名前がわかれば検索で、遊び方やキャラクターなどの情報が得られる。最近ではユーチューブで「ゲーム実況」なるプレイ動画が配信されているので、試しに視聴してみるのもいい。

 多少なりともゲームの知識を得れば、それを糸口に子どもと会話する。

「あのキャラクターが強いのはなぜなの?」「戦闘は何分くらい続くの?」

 そんなやりとりからゲーム状況を知り、熱中する理由に迫っていく。子どもの言い分にも耳を傾けながら、親の不安や要望を話したほうが伝わりやすい。

 また、“親自身に置き換える”方法も勧めたい。たとえばゴルフや麻雀、デパートのバーゲンセールなど、親にもつい熱くなることがあるだろう。

 楽しんでいる最中に「やめろ」と言われても、簡単には従えない。もう少しで勝てるとか、ここでやめたら損をするとか、そういう心理が働いて時間やお金をつぎ込んでしまう。

 実は、オンラインゲームも同様だ。

 ゲーム会社はプレイヤーの心理や消費行動を分析、研究し、ゲームにどっぷりハマるよう綿密なビジネス戦略を立てている。勝敗や競争、ドラマチックなゲーム展開、期間限定プレゼントなどで刺激し、簡単に離脱しないよう誘導する。いわば誘惑に勝てない状況だと考えれば、親も子どもの気持ちを理解しやすい。さらに、オンラインゲーム特有の事情も考慮したい。ゲーム内でチームを組み団体戦を行う場合、各メンバーに「明日までに〇ポイント獲得」といった戦力向上の“ノルマ”が課せられたりする。チームへの忠誠心や仲間との同調意識に縛られ、ノルマを達成するまでゲームをやめられないというケースも多いのだ。

「ゲーム三昧の息子への接し方を変えました」

 と話すのは、高校3年生の息子を持つ父親(52)だ。

「“意志が弱い”とか“クズ野郎”とか、ずっと息子を責めつづけてきました。ですが、どう叱っても通じず、ますますゲームにのめり込む。私もストレスで酒量が増えましたが、ふと我が身を振り返ってみたんです。よくよく考えれば自分のほうも、ハシゴ酒に二日酔い、前後不覚に陥っての失敗談は数えきれない。そういう実体験から、息子に教えられることがあるんじゃないかと気づいたんです」

 この父親は自分の反省を率直に伝えた上で、

「おまえには後悔してほしくない。ゲームについてよく考えてくれないか」

 と諭してみた。息子はいつになく考え込んだ様子で、以来、ゲームを控えるようになった。今では大学進学を目指し、受験勉強に取り組んでいるという。

(3)SNSいじめの「被害対応」と「加害者シミュレーション」

 SNSいじめは加害者が集団化して執拗な個人攻撃を行うなど、陰湿で残忍な形になりやすい。場合によっては被害者の自殺といった最悪の事態も招くため、適切な対応で子どもを守ることが重要だ。

「子どもたちには『SNSでいじめられたら相談して』ではなく、『イヤなことや傷つくことがあったら教えて』と伝えています」

 中学3年生の息子と1年生の娘を持つ母親(44)は、過去にいじめられた自身の経験から、あえて「いじめ」という言葉を使わない。

「私もそうでしたが、子どもってどこからがいじめなのかよくわからなかったり、自分がいじめられていると認めたくなかったりする。少しでもイヤなことがあった時点で相談できたほうが、ダメージも軽いと思うんです」

 SNS上の誹謗中傷は、時間の経過とともに拡散しやすい。大事なのは、子どもの気持ちに寄り添った表現方法で相談を促し、早期発見に努めること。併せてSNS各社の相談窓口を事前に調べておく。たとえばLINEには「通報」という機能があり、被害申告に応じて加害者アカウント停止などの措置が講じられる。

 一方、加害者との交渉に備えるには「証拠の保全」も欠かせない。たとえばSNSの誹謗中傷メッセージをスクリーンショット(スマホの画面を画像で保存する機能)で残したり、「いつ、誰が、どんなふうにいじめてきたか」など一連の流れをまとめたりする。

 実際に証拠を活用した母親(39)はこう話す。

「中学2年生の息子が部活動のグループLINEでいじめられていたんです。加害者の親子との話し合いの場で証拠を出したら、相手の態度が一変しました」

 被害画像を示したことで謝罪を受け、今後の対応を協議できたが、当初はまともに取り合ってもらえなかった。「軽くふざけただけ」、「みんなやってる」、そんな言い逃れをされたというが、ことSNSいじめに関しては加害者の意識は低い。被害者への想像力の欠如は言うまでもないが、自分の加害行為が自分に返ってくることも想像しない。

 たとえば「匿名ならバレない」と考えても、被害者がプロバイダに対して発信者の特定を求める、発信者情報開示請求などの手続きで個人情報が判明する。結果的に損害賠償責任を負ったり、自分のほうが「いじめ加害者」としてSNSで糾弾されたりする。そこで取り入れたいのは、「自分が加害者になったらどうなるか」というシミュレーション教育だ。加害者になる具体的な問題点を教えることで、安易ないじめ行為を抑制できる。

自己嫌悪の悪循環

(4)子どもの心に寄り添って“スマホ依存”を防ぐ

「あんなに真面目だった息子が、スマホ依存になるとは思いませんでした」

 と話すのは、高校1年生の息子を持つ母親(42)だ。

 3年前、苦労の末に中高一貫の私立校へと入学した息子は半年余りで不登校に。自室にこもって連日深夜までオンラインゲームや動画視聴に没頭した。

「最初はなんとか登校させようとしました。先生に家庭訪問を頼み、家庭教師もつけましたが、息子の様子はひどくなるばかり。困り果てていたとき、不登校経験者の若者が集うトークイベントを知って、夫婦で参加したんです」

 そこで耳にした「死んでも学校に戻りたくなかった」、「ゲームが救いの場だった」という言葉に衝撃を受け、目の前の若者に息子が重なった。学校に馴染めず、悩んでいることは薄々感じていたが、体面を気にしてつい追い立てていたという。

「学校でも家でも出せないSOSをスマホに向けていたのかもしれないと思いました。その後、息子の希望を尊重し、フリースクールに転校させたんです。高校は通信制の登校コースを選びましたが、同級生とフットサルチームを作ったりしてすごく楽しそう。いまではスマホも適度に使うくらいです」

 スマホにのめり込む子どもに対し、「楽しいから」「ヒマだから」などと単純に決めつけるのは早計だ。実際には現状への不満や不安、自信喪失に苦しんでいることも少なくない。

 勉強しても結果が出ない、がんばっても友達ができないといったつらさを、オンラインゲームやSNSで解消しようとする。そこでうまく解消できればいいが、逆に自分の弱さを感じてますます自己嫌悪に陥ることも。その自己嫌悪こそが、さらに依存を強化するという悪循環だ。

 そのため、まずは子どもの心を理解したい。悩みやコンプレックスに寄り添いながら、自信を回復させていく。前述のコミュニケーション術なども参考に、親自身の体験談を語ってみるのもいいだろう。

 自分の存在価値に気づかせることも大切だ。家事を手伝わせるなど役割を与えると、子どもの意識も変わっていく。高校2年生の娘を持つ母親(43)は、愛犬の介護による「娘の激変」を目の当たりにした。

「中学時代からLINE依存でした。食事中でもスマホを手放さず、私が注意すると不貞腐れていたんです。そんな娘が、犬の介護が必要になったらもう必死。給餌やオムツ交換、マッサージと率先してやるうちに、LINEには見向きもしなくなりました」

 残念ながら3カ月後に別れが訪れたが、娘は犬猫の保護団体でボランティアをはじめた。「やることが多くて大変」と言いながらも生き生きしている。娘の懸命な姿に、親の意識も変わった。一緒に家事をしながらおしゃべりするなど、すっかり良好な関係だという。

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