上野動物園「シャンシャン」が12月に返還 中国のどこでどんな暮らしをするのか?

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 上野動物園の人気パンダ、雌のシャンシャン(3)が年末までに中国に返還されるという。2017年6月生まれのシャンシャンは、本来、昨年6月が返還期限だった。が、中国と東京都が協議して、今年の12月31日まで期限を延長していた。中国に戻ったら、どこでどんな生活を送ることになるのか。

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 上野動物園には、シャンシャンの他に、父・リーリー(15)と母・シンシン(15)がいる。この2頭は2011年2月に来日。貸与期間は10年のため、来年2月が返還期限となる。上野動物園にパンダが1頭もいなくなるとは、何ともさびしい話である。

「上野動物園は、東園にいるシャンシャンを見るために、休日だと2時間近く待たねばならないことが多い。とはいえ、実際に見られるのはたった1分ほどです。平日でも1時間待ちが多く、80分待つこともあります。何度も見たければその都度並ばなければならず、クタクタになります。しかも、リーリーとシンシンは8月下旬に西園に引っ越したので、パンダファンは東園と西園を行き来しています。こんなにパンダ人気の高い動物園は世界では例をみません。現在、都と中国野生動物保護協会がリーリーとシンシンの貸与期間の延長と、延長する場合の年数について協議中。延長は確実と思われます」

 そう解説するのは、パンダジャーナリストの中川美帆氏。彼女は、中国以外でパンダを飼育している20カ国のうち、19カ国を見て回った、筋金入りのパンダ通だ。昨年8月には、『パンダワールド We love PANDA』(大和書房)を出版している。

「これまで、上野動物園で飼育されたパンダは13頭です。1972年に来日したカンカン、ランランに始まり、80年来日のホアンホアン、82年来日のフェイフェイまでは贈与でしたので、返還の義務はありませんでした。ところが、81年に中国がワシントン条約に加盟し、84年に同条約の中の『附属書1』で、絶滅の恐れのある種は、商業目的のための国際取引は原則禁止になりました。パンダは絶滅の恐れがありますから、繁殖研究を目的として、パンダを貸し出すようになったのです」

行先は四川省の繁殖基地

 フェイフェイとホアンホアンの子どものチュチュ、トントン、ユウユウも返還の義務はなかった。ただユウユウは、日中親善でリンリンと交換で92年、中国の北京動物園へ送られている。この交換は、リンリンとトントンを繁殖させる目的もあった。上野動物園の家族だけで暮らしていては繁殖できないためだ。

 2003年に来日したシュアンシュアンはメキシコ所有のパンダ。トントンの死後、リンリンの繁殖相手として来日したが、繁殖には至らず、2年後の05年には、メキシコのチャプルテペック動物園に戻った。

 つまり、上野動物園では、中国から貸与されたのはリーリーとシンシンだけということになり、その子供も貸与の対象となる。パンダの繁殖研究費の名目で都が中国に支払っている金額は年95万ドル(約9962万円)。中国へ返還されるのも、シャンシャンが初となる。いったいどこへ行くのか。

「シャンシャンを中国へ送り届ける業務は、阪急阪神エクスプレス(本社大阪市)が181万3912円で落札しました。同社は、上野動物園のすべてのパンダの輸出入にかかわっています。シャンシャンの行先は明らかになっていませんが、飛行機の目的地は四川省の成都です。新型コロナの影響で、成都への直行便が欠航していますので、このまま運航が再開されなければ上海経由となりますね。成田~上海が約3時間30分。上海~成都も約3時間30分かかります」(同)

 旅客機の貨物室もしくは、貨物専門の貨物機で運ばれるという。

「目的地である四川省には、上野動物園と関係の深い『中国ジャイアントパンダ保護研究センター』の基地が4カ所あり、パンダの繁殖や人工飼育、治療、病気の研究などをしています。うち1カ所は主に野生化訓練のための非公開の基地ですので、3カ所のうちのどこかに行くことになるでしょう。シャンシャンは基地に着いたら、1カ月間隔離されて検疫を受けます。その後、繁殖に向けて相性のいいパートナーを探すことになると思います」(同)

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