「大麻の東海大」ドラフト指名は1人だけ 選手の父「大麻の件はいい迷惑」

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 コロナですっかり様変わりした今年のプロ野球ドラフト会議。淡々と進み、盛り上がりに欠ける感も否めなかった。が、「部員の“大麻使用”が発覚した東海大の3選手は指名されるのか」――。その意味で近年稀に見る関心を呼んだのも確かである。

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 当たりくじに沸く会場。指名された選手に焚かれるフラッシュ。いわば醍醐味が排除されたドラフト会議は、10月26日に行われた。致し方ない状況下とはいえ、リモート会見もつくづく味気なかった。

 前評判通り、早稲田大の早川隆久投手と近畿大の佐藤輝明内野手は1位指名で各球団が競合。早川投手は楽天、佐藤内野手は阪神が交渉権を獲得したときには、さすがに盛り上がったものの、

「やはり淋しかったですね。今年は“超高校級”も目玉になりませんでしたし」

 と、運動部デスク。

「昨年は、ロッテの佐々木朗希やヤクルトの奥川恭伸などがいました。プロのスカウトはふだんから選手を見つつ、長丁場の甲子園で猛暑と戦いながらどれだけやれるかも重要視します。高校生は甲子園でグンと伸びる選手が多いんです。だから甲子園がなかった今年は、各球団とも高校生の見極めには苦労しました。ある程度実力が読める大学生や社会人が上位指名に多かったのは自然な流れです」

 大学生といえば、今回のドラフト関係者を当惑させる不安定要因となった“大麻の東海大”。ともに大学日本代表経験のある小郷(おごう)賢人、山崎伊織の両投手と、串畑勇誠内野手がプロ志望届を出していた。

「ドラフトのわずか9日前、10月17日に部員の大麻使用を公表してからというもの、東海大は“2部員の大麻使用を確認”としかアナウンスしなかった。なので、3選手が使用者に入っているのか、上位指名する球団はあるのか、そこが注目されましたね」(同)

まさか3選手が…

 運動部デスクが続ける。

「大学は“指名されてもリモート会見はやらない”と決めました。やると言っていたのを直前に翻したので、スカウトなどのあいだでは“まさか3選手が使用者に含まれているのか”とも囁かれていた。球界全体が息をのんで見つめましたよ」

 そんな3選手がドラフトを迎える日まで、関係者はいかなる心持ちだったか。

 まずは、155キロ右腕、小郷投手。郷里岡山にいる父親の元章(もとあき)さんに聞いた。

「最初、部員の大麻使用はネットニュースで知ったんです。すぐに大学から連絡が入って、うちの子は“大麻とは無関係でドラフトにも影響はない”と聞きました。親としては、息子の夢だったプロ入りが叶ってほしい、それだけを考えていました。確かに大麻の件は、いい迷惑だと思わなくもなかったですけれど」

 彼が中学時代に所属した「ファイターズ岡山」の三宅利治代表も、

「小郷は、“走ってこい”と言っても、気にせず歩いてるんですなあ。のんびり屋やけどマウンドに上がると一変して勝負師の顔つきになる。でも、帰省したら必ずチームに顔を出してくれる優しさもある。だから小郷が大麻なんてやるはずないと思うてました」

 そんな思いは、153キロ右腕の山崎投手が中学時代に汗を流した兵庫「明石ボーイズ」代表も同じで、

「情報がなかったので心配でしたね。プロ側も、問題を抱えた大学から選手を獲るのは不安やろうし。山崎は今春、右肘のトミー・ジョン手術を受けたのですが、もともと、1位か2位で指名される実力があります。とにかく早くリハビリを済ませて1軍で投げる姿を見せてほしい」

 この日、会議で名前を呼ばれたのは山崎投手のみ。巨人から2位指名だった。

 3選手を見守った親や出身チームの関係者がはからずも味わったドラマ。

 やはり、“大麻の東海大”が「最大の見所」だったのはまちがいあるまい。

週刊新潮 2020年11月5日号掲載

ワイド特集「『全集中』の人間鑑賞」より

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