阪神を退団、「福留孝介」にまだ活躍の場はあるか?古巣中日か、それとも…

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 10月26日にドラフト会議が行われ、今年も多くのプロ野球選手が誕生することとなった。だが、逆に言えば、その分だけユニフォームを脱ぐ選手が出てくる。各球団で戦力外、引退が報道される時期となっているが、実績的にみてナンバーワンと言える選手が阪神からの退団を報じられた福留孝介になるだろう。

 中日時代は2度の首位打者に輝き、2008年から5年間はメジャーリーグでもプレー。2013年に阪神で日本球界復帰を果たすと、38歳で迎えた2015年にはベストナインとゴールデングラブ賞をダブル受賞して、その健在ぶりをアピールしてきた。日米通算2407安打は現役では青木宣親(ヤクルト)に次ぐ数字である。今季は開幕から調子が上がらず、日本でプレーした中では最低のシーズンとなっているが、本人はまだまだ現役続行に意欲を燃やしていると報じられた。果たして、福留が活躍する余地のある球団はあるのか。今季の成績と移籍先候補となる球団の選手構成から探ってみたい。

 まず、候補として報じられたのが古巣の中日だ。本人も最後は慣れ親しんだユニフォームを着たいという意思があるとも言われている。中日の今季の外野陣を見てみると、首位打者争いにも加わっている大島洋平が不動のレギュラーだが、次いで出場機会が多いのが福田永将とアルモンテという状況だ。他には平田良介、井領雅貴、遠藤一星、シエラなどが続いているが、確かにどの選手も決め手を欠く状況で、選手層が薄い。

 若手では石垣雅海、滝野要、伊藤康祐、根尾昂、岡林勇希などの名前も挙がるが、一軍定着にはもう少し時間がかかるように見える。また、代打陣を見ても最も多いのは井領で、それに次ぐのは堂上直倫だが、どちらも代打率は決して高くない。こう見ると、外野のバックアップ、代打の切り札として福留の入り込む余地は十分にあるように見える。日本球界に復帰する時に中日ではなく、阪神を選んだのは、当時の首脳陣との折り合いが合わなかったことも理由の一つと言われているが、今は首脳陣が一新されていることも復帰への後押しとなる。球団にとっても功労者であることは間違いなく、最後の花道を用意するという可能性も十分に考えられるだろう。

 他のチームで、意外と可能性がありそうなのが巨人だ。外野手のベテランは生え抜きの亀井善行がいるが、今シーズンで節目となる通算1000本安打を達成したこともあって、このまま引退もあり得ると報道されている。今年は新外国人のパーラを獲得したが、故障で思ったような成績が残せず、シーズン途中で楽天からウィーラーをトレードで獲得するような場面があった。現在は若手の松原聖弥が台頭してきているが、完全なレギュラーと呼ぶにはまだまだ微妙な立場である。ドラフトでも即戦力の外野手の獲得を目指すと表明していたが、佐藤輝明(近畿大→阪神)の抽選を外し、結果的には投手中心の指名となった。今シーズンの代打成績を見ても、右打者はウィーラー、石川慎吾がそれなりの結果を残しているが、左打者は亀井以外に目立つ選手は見当たらない。

 先述したように、亀井が引退ということになれば、外野も代打も経験のある選手が欲しいという話が浮上してきても不思議ではない。プロ入りの際には福留自身も意中の球団として中日と巨人を挙げており、巨人も獲得に熱心だったという経緯もある。すべては亀井の去就次第というところはあるが、最後に巨人のユニフォームを着てプレーする姿を見てみたいというファンもいるのではないだろうか。

 昨年のオフには同じく阪神を退団した鳥谷敬の去就がなかなか決まらず、最終的にはシーズン直前にロッテが獲得している。鳥谷は今年それほど目立った成績を残しているわけではないが、その経験がチームにもたらしたプラス面も確かに多かった。福留は鳥谷と比べても、より豊富な経験を持つ選手であり、このような成績では現れない効果も見込めることは間違いないだろう。来シーズンで44歳となるが、どこに移籍するにせよ、また元気にプレーする姿を見せてもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月2日掲載

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