中国「千人計画」参加者が明かす“拝金主義” 論文ボーナスは1500万円、データ捏造に走る者も

国際 中国 週刊新潮 2020年10月29日号掲載

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「日本にいても就職できない」

 日本学術会議に所属していたメンバーも参加する「中国千人計画」。世界中の科学技術を盗もうとするこの計画に実際に参加する日本人研究者の生の声を聞くと、「論文1本で1500万円」など中国の科学技術への投資がケタはずれであることがわかる。なかにはボーナス欲しさにデータ捏造に走る者もいて――。

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 東大や京大をはじめとする日本の最高学府で教育を受け、晴れて未来を担う科学者となった人々は、何故彼の国に搦(から)め捕(と)られたのか。

 率直な疑問を、「千人計画」に応募して中国へと渡った70代の元大阪大学教授にぶつけると、匿名を条件に重い口を開いてくれた。

「自ら手を挙げたわけでなく、8年前、友人だった北京航空航天大学の学部長に誘われたんです。研究部門のトップに相当するポジションを用意するから是非やって欲しいと言われて……」

 招聘(しょうへい)された大学は軍事研究が盛んな「国防七校」のひとつで、中国の「国家重点大学」にも選出されている。ちなみに、彼は日本で核物理などを研究するシンクタンクに属していたと聞けば、その叡智が軍事転用される恐れを孕んでいるのではないか。

「自分は基礎分野の研究者ですし、論文を世界に向けてオープンにしていますから心配はありませんよ。コロナの前は2週間おきに中国と日本を往復する生活でしたが、片道たったの2時間半で不便も感じない。私は中国でも本来は定年の齢ですが、まだいて欲しいと言われているので長く続けられています」

 そう話したかと思えば、こんな本音を吐露する。

「日本人の若手研究者を中国へ呼んでいますが、彼らは日本にいても就職できない。後進を育成するため、仕方なくこちらへ来ている側面があるのです」

 まさに中国は、日本の研究者たちの「悲哀」を見抜き、巧みに誘いの声をかけているのだ。そんな彼らのやり口に触れる前に、ここで改めて、本誌(「週刊新潮」)10月22日号で報じた中国の「千人計画」について、振り返っておきたい

FBIが「千人計画」参加者を逮捕

「『千人計画』は、海外にいる理工系の優秀な研究者を好待遇で中国に集め、軍事、経済の発展に寄与させることを目的としています」

 と解説するのは、産経新聞ワシントン駐在客員特派員で麗澤大学特別教授の古森義久氏である。

「2008年に中国政府の国務院と中国共産党(中共)中央組織部が主体となってスタートしたプログラムで、その存在自体は公表されていますが具体的な活動内容はこれまで明らかにされてきませんでした。計画開始から間もない09年に共産党が発表した文書では、200名近くの研究者が集められ、その中には日本からの招致も含まれるという趣旨の記述があります」

 海外メディアによれば、参加した研究者の数は18年までに7千名を超えるほど増加。国別にみれば、日本はアメリカ、ドイツに並んでトップ3に入る。

 このプロジェクトが単なる「学術交流」でなく、知財の流出を招くとして欧米や豪州などが警戒するのには大きな理由があった。それは中国が「軍民融合」を掲げ、民間人による研究成果や収集した情報は、必要に応じて軍が吸い上げる体制が法的に整っているからだ。命令に従わなければ罰則もある。たとえ外国人といえども、中国政府の庇護の下で研究すれば、その成果は人民解放軍や共産党に利用されうるのだ。

 ゆえにトランプ政権は18年以降、「千人計画」によって最先端の知財が不正に中国へ流れているとして取り締まりを強化している。

 この3年間で、FBIが科学技術窃盗容疑で逮捕した中国関連の人物は約40名にも及ぶ。その中には、「千人計画」の参加者が多く含まれていた。全米を震撼させたのは、今年1月にハーバード大化学・化学生物学部長を務め、ナノテクノロジーの世界的権威としてノーベル賞候補だった名物教授までもが逮捕、訴追されたことである。

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