生徒の背骨を折った柔道部顧問 前任地でも「ビンタ」「頭突き」3回処分の過去

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 愛のムチと体罰の線引きはケースバイケース。だが今回は、そんな目安など完全に振り切った虐待である。

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 9月25日の夕方、兵庫県の宝塚市立長尾中学校。その武道場で、無慈悲な暴力が振るわれていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 何度も謝る12歳の男子生徒。数学教諭の上野宝博(たかひろ)容疑者(50)は、

「今ごろ言っても許さん」

 と言いながら、背負い投げや足払い、袈裟固めといった投げ技や寝技を10回ほど繰り返す。あろうことか、締め技で失神した生徒にビンタをかまして目覚めさせ、また何度もブン投げた。その次は13歳の男子生徒。眼鏡を外させたうえで執拗に寝技を繰り返し――。

 この場面を、兵庫県警担当記者が解説する。

「上野は柔道部顧問で、三段の黒帯です。コロナ禍で部活開始は6月以降だったので、1年生の二人は初心者同然でした。受け身すら満足にとれない相手に、上野は“練習だ”と言い、好き放題やったのです」

 暴行は約30分続いた。その様子に恐れおののき、40代の柔道部副顧問と部員十数名は息をのんで見つめるだけだったという。

「きっかけは、前日24日にOBが差し入れたアイスを二人が食べたこと。アイスは棒状のものが箱に何本か入ったタイプで、柔道部の冷蔵庫に保管されていたといいます。それが数本減っていることに上野が気づき、十数名の部員を集めて“聴取”していたのです。そして、“容疑”を認めた二人が餌食になりました」(同)

前任地で3回処分

 躾(しつけ)の名を借りた体罰は、巷で散見されるが、

「レベルが違います。12歳の生徒は第7胸椎圧迫骨折、つまり背骨骨折で全治3カ月の重傷です。13歳の生徒は首の打撲で全治7日でした。二人が10月に入って被害届を出し、12日に宝塚署が傷害容疑で逮捕。警察は、よほどの事態と判断したのでしょう。全治3カ月というのは、半グレ数人が寄ってたかって一人をリンチした事件と同じような水準ですから」(県警担当記者)

 そんな“柔道教諭”について、宝塚市教育委員会の関係者は次のように明かす。

「彼はいまの中学校に赴任して4年目でした。27年前、1993年に甲南大学を卒(お)え、いったん民間企業に入っています。98年から、複数の中学校で非常勤講師などの勤務を経て、2009年、前任地である宝塚市内の中学校で初めて正規職員となりました。ここでも体罰を行い、計3回の処分を受けています」

 その内容は、11年に柔道部員の暴言に対してビンタをし、訓告。12年は生徒指導の際、対応が不真面目な生徒の胸倉を掴んで押し倒し、2回目の訓告。そして13年にも、指導に従わなかった生徒の顔に頭突きをし、鼻骨骨折や口内裂傷を負わせている。これで減給3カ月の懲戒処分だ。最初の件は熱血指導と言えるとしても、段々エスカレートして激しくなってきたことが窺える。先の市教委関係者によれば、

「処分を受けたあと、本人は自発的に、怒りを抑えるアンガーマネジメントの研修を受けていました。なのに、“アイスを黙って食べた”くらいであそこまでキレるとは……」

週刊新潮 2020年10月29日号掲載

ワイド特集「風雲急の人々」より

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