再び暗黒時代に突入へ なぜ「広島カープ」は急激に弱体化してしまったのか

スポーツ 野球 2020年10月25日掲載

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 2016年に25年ぶりのリーグ優勝を果たし、そこから三連覇を成し遂げた広島。ちなみにセ・リーグで三連覇を達成したのは巨人以外の球団では初という快挙である。だが、昨年は最後の最後で阪神に逆転されて4位となり、佐々岡真司監督が新たに就任した今年は最下位争いを演じるなど「黄金時代」から一転して苦しいシーズンが続いている。

 チームが低迷する大きな要因の一つは2017年、2018年と2年連続でシーズンMVPに輝いた丸佳浩がライバルの巨人に移籍したことだが、問題点はそれだけではない。むしろそれ以上に深刻なのが投手陣の崩壊だ。過去5年間のチーム投手成績を並べてみると以下のような数字となった。

2016年 チーム防御率:3.20 先発防御率:3.29 救援防御率:3.06
2017年 チーム防御率:3.39 先発防御率:3.71 救援防御率:2.77
2018年 チーム防御率:4.12 先発防御率:4.26 救援防御率:3.87
2019年 チーム防御率:3.68 先発防御率:3.75 救援防御率:3.63
2020年 チーム防御率:4.43 先発防御率:4.15 救援防御率:4.89

※2020年は10月19日時点

 数字は年々悪化していることがよく分かる。特に厳しいのがリリーフ陣で、今年のチーム防御率はヤクルトに次ぐ5位だが、救援防御率は12球団でも最下位の数字となっている。チーム全体のホールドポイント数48も同じく12球団最下位である。リーグ三連覇を支えた中崎翔太、今村猛、一岡竜司、中田廉といった顔ぶれが勤続疲労で二軍暮らしが続き、新外国人として補強したスコット、DJ.ジョンソンが揃って戦力となっていない(DJ.ジョンソンはシーズン途中で楽天に移籍)。若手では塹江敦哉、ケムナ誠、島内颯太郎などが登板機会を重ねているものの、まだまだ安定感には欠けるのが現状だ。オフには新外国人、ドラフトでリリーフ陣を補強しないと来年以降も苦しい戦いが続くと予想される。

 先発陣では、ルーキーの森下暢仁が見事な成績を残しているものの、大瀬良大地、K.ジョンソン、野村祐輔といった実績のある投手が揃って離脱。将来のローテーション候補として上位指名で獲得した薮田和樹、岡田明丈、矢崎拓也、高橋昂也も揃って伸び悩んでいる。大瀬良、森下というまだまだ上積みが見込める柱がいるのは大きいが、こちらも早めに手を打つ必要がありそうだ。

 一方の野手はチーム打率、得点とも10月19日時点でリーグ3位と決して悪い数字ではないが、こちらも課題は少なくない。気になるのはチームの伝統とも言える機動力の低下だ。リーグ三連覇中の盗塁数は118、112、95と少しずつ減りながらも3年連続でリーグトップの数字を残していたが、昨年は81でリーグ3位となると今年は10月19日時点でリーグ4位の50とさらに悪化している。

 毎年二桁以上の盗塁をマークしていた丸が抜け、リードオフマンの田中広輔が膝の故障もあって成績を落としているというのもあるが、チーム全体として走る意識は確実に薄れているように見える。これは盗塁数に限ったことではなく、あらゆる場面でまずい走塁が目立つのだ。2年目の大盛穂、小園海斗、羽月隆太郎やルーキーの宇草孔基といった脚力のある若手がいることは救いだが、改めて走塁に対する考え方を見直してもらいたい。

 そして、野手陣で最大の問題は、主砲の鈴木誠也が近い将来メジャーに移籍する可能性が高いということだ。今年は少し不調の時期もあったが、それでも現時点で打率3割をクリアしており、ホームラン、打点、出塁率、OPSなどあらゆる指標でリーグ上位の成績を残している。選手としての存在感は、阪神に移籍する前の金本知憲や新井貴浩と比べても遥かに大きく、その穴を埋めることは容易ではない。

 若手では2年目の林晃汰がウエスタンリーグでホームラン王争いを演じるなど将来が楽しみな成長を見せているが、“ポスト鈴木誠也”として期待できる強打者タイプの野手はまだまだ不足している。投手陣も立て直しながら、次代の中軸候補にも目を向ける必要があるだろう。

 編成面に触れると12球団で唯一FAによる選手獲得を行っておらず、自前で選手を育ててきただけに、まずは若手の輩出スピードを上げることが重要だが、もう少しトレードなども検討すべきではないだろうか。

 捕手では坂倉将吾が台頭し、若手にも中村奨成、石原貴規が控えていることもあって、中堅の磯村嘉孝が完全に宝の持ち腐れとなっている。捕手不足に苦しむ球団は多いだけに、トレードを打診すれば応じてくるチームもあるはずだ。かつての成功体験を踏襲していくことも大事だが、それに縛られているとチームの硬直化を招くことにも繋がりかねない。ここで踏みとどまることができるのか、かつての15年連続Bクラスという「暗黒時代」に戻ってしまうのか、このオフは非常に重要な分岐点と言えそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集