高級車専門カーシェア会社が破綻で600人がローン地獄 顧客が語る“詐欺的ビジネス”の全容

国内 社会 2020年10月19日掲載

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狙い目は信用情報がまっさらの若者たち

 このビジネスモデルで注目すべきは、オーバーローンを組ませることで彼らが得ている莫大な利益である。1台購入させるだけで、オーナーに報酬を支払ったとしても、300~500万円の利益が残る計算だ。

 ある中古車販売業者によれば、

「1日1万円などでユーザーに貸し出していたのですが、そんな利益よりもオーナーを増やしていくほうが、利幅はでかい。結果、ねずみ講のようにオーナー獲得に精を出していくのです。新規オーナーを紹介したら10万円もらえるという特典もあった。Xの周りにはネットワークビジネス関連の人間も多く出入りするようになり、こんなにも被害が膨れ上がったのです」

 彼らの毒牙にかかってしまったもう一人の被害者は、昨年6月にトヨタの高級ミニバン「ベルファイヤ」を購入した井上隆さん(仮名・28)である。600万円以上ものローンを抱えることになってしまったが、彼は平野さんとは違い、これまで借金とは無縁の生活を送っていた。

「僕のように、信用情報がまっさらの会社員こそが、彼らの狙い目でした。信販のローンが通りやすいからです。同時に2台購入して、1000万円以上のローンを組まされた被害者もいる。所帯を持っているサラリーマンの中には、月2~3万円程度の小遣い制で生活している人たちが多い。妻に内緒で、数十万円というまとまったカネが入るという話は魅力的なのです」

 井上さんは、破綻の情報を耳にするや否やすぐさま動き、車の所在地をつきとめ車を確保した。

「僕はラッキーなほうだと思います。見つかっていない人も多いし、見つかったとしても車体に苔が生えていたり、フロント部分が損壊したり、とひどい状態のまま放置されていたケースもある。僕は、これは詐欺だと思い、彼らが車を放置していた場所から一番近かった埼玉県武南警察署に2度行きました。ただ、担当者は『事件性はない』というつれない反応でした」

タワマンに住み、キャバクラで一晩40~50万円の豪遊

 一般的に、詐欺罪の立証は難しいと言われる。Sグループは、最終的には自転車操業状態だったが、カーシェアリング事業を展開していた実態はあった。車はオーナー自らの意思で購入しており、オーナーはグループ傘下のL社と自動車使用業務委託契約書も交わしていた。

 その条項には「破産手続き開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始の申し立てがあった場合又は清算手続きに入った場合」、契約を直ちに解除すると明記してあり、オーナーはみな署名押印していた。目先の利益に目が眩み、よく調べもせずに契約してしまった彼らにも落ち度があるということだ。

 いまオーナーたちは、SNSで連携を取り合い、警察や弁護士に相談しながら、Xら幹部たちの行方を追っているが、まったく連絡が取れないという。

 ただ、元従業員が言うには、

「ヤツを捕まえたところで何の意味もないでしょう。彼はほとんどのカネを事業に費やして文無しになってしまった。一時期は、港区三田のタワーマンションに住み、一晩で六本木のキャバクラで40~50万円豪遊する暮らしをしていたんですがね」

 Xは若いころ、消費者金融で働いていたという。

「そこで得たローンの知識をフル活用し、いろいろなビジネスを展開していた。グループ内には20社以上の関連会社があるのですが、売り上げを付け合うなどして大きく見せて、銀行からもカネを引っ張っていたようです」

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